ゴンドリン†
概要†
解説†
シンダリンで「石の歌(Stone Song)」の意だが、「隠れ岩山(Hidden Rock)」の意にも解釈された。クウェンヤでは「水の音なう岩山(Rock of the Music of Water)」の意であるオンドリンデと名づけられた。
第一紀にベレリアンド北方に存在した、エルフの隠れ王国。王はトゥルゴンで、その民はゴンドリンドリムと呼ばれた。
エルダマールの都ティリオンを模して築かれた、中つ国で最も美しい都とされた。
城壁は白く高く
繞 らされ、階 は滑らかで、王の居城の塔は堅固に高く聳え立った。そこにはきらめく噴水が戯れ、トゥルゴンの王宮の庭には、古の代の二つの木に似せたものが立っていた。*1
最も長くモルゴスの目を逃れて存続したエルダールの王国であり、この地で後に中つ国の自由の民の希望となるエアレンディルが生まれた。
グラムドリング、オルクリスト、つらぬき丸は在りし日のゴンドリンで鍛えられたものであるという。
ゴンドリンの構造†
ベレリアンド北方にあった環状山脈エホリアスに囲まれたトゥムラデンの平原には岩山が一つ立っており、その岩山アモン・グワレスの頂に都は築かれていた。城門からは広い石段が都へ続き、広場には都の名の由来ともなった美しい噴水があり、王の塔が高く聳えていた。王宮の庭にはヴァリノールの二つの木の写しであるベルシルとグリンガルが据えられていた。
環状山脈を抜けて都のあるトゥムラデンの谷間に至るには枯れ川の秘密の通路を辿るようになっており、その入口はブリシアハの浅瀬の北にあった。最初の衛兵所である外門「暗き門」を過ぎると、険しい峡谷であるオルファルヒ・エホルに出る。そこには木、石、青銅、鉄、銀、黄金、鋼からなる七つの門があり、これを通り抜けることでトゥムラデンの平原に出ることができた。
北にはキリス・ソロナスの山道が、南にはクリッサエグリムの連峰があり、それらに住む大鷲たちによっても外敵の接近から守られていた。
歴史†
トゥルゴンの隠れ王国†
中つ国に帰還したノルドールの公子の一人トゥルゴンはウルモの啓示を受けて、エホリアスの中にトゥムラデンの谷間を発見する。そこでトゥルゴンは構想を練り、ダゴール・アグラレブの後、52年の歳月をかけてそこに秘密都市を築き上げた。
ゴンドリンはエホリアスに住む大鷲たちの目と、シリオンの流れに宿るウルモの力によって守られており、最も長くモルゴスに抗して存続することが運命づけられていた。
トゥルゴンはゴンドリンを守るため、エルフたると人間たるとを問わずよそ者で秘密の道を知り都の姿を見た者は、二度とゴンドリンから出てはならないという掟を立てた。
しかしトゥルゴンの妹アルエゼルは広い外界を望み、例外としてゴンドリンを出ていく許しを得た。そこからマエグリンが都にやってくることとなった。
またダゴール・ブラゴッラハの後には、フーリンとフオルが大鷲に運ばれてゴンドリンを訪れた。二人はトゥルゴンの愛と、都へ至る道を正確には知らないという理由から、再び出ていくことを許された。
ニルナエス・アルノエディアドにおいてトゥルゴンは自ら囲みを開いて1万の大軍を率いて姿を現し、エルダールとエダインの士気を大いに高からしめた。しかし戦いは大敗に終わり、トゥルゴンはフーリンとフオルに殿後を守られて辛くもゴンドリンに帰り着いた。
それゆえトゥルゴンの王国の存在はモルゴスの注目するところとなる。モルゴスは戦いで一人生き残ったフーリンを捕らえて彼と家族に非業の呪いをかけ、その末にフーリンを釈放した。寄る辺ない身となったフーリンは再びゴンドリンを見出す望みを抱いてエホリアスの麓に来たが、道を見つけることはできず、絶望して呼び声を上げた。ここからゴンドリンのおおよその所在がモルゴスの知るところとなった。
一方、一連の禍事の陰でフオルの息子トゥオルがウルモに導かれてゴンドリンにたどり着き、トゥルゴンの娘イドリルと結ばれて息子のエアレンディルがこの地で生まれた。
ゴンドリンの陥落†
その日は祭りの前夜に当たり、ゴンドリンの国民は、日の出を待って曙光と共に歌を歌うため城壁に登っていた。夜が明ければ、その日はかれらが夏の門と呼ぶ一大祝祭日であったからである。ところが赤い光は、東ではなく北の山々に昇った。敵の前進を阻む間もなく、かれらはゴンドリンの城壁の真下まで迫り、都は望みなきまでに包囲された。*2
ゴンドリンの秘密と守りといえどもマンドスの呪いを免れ得ず、いずれは裏切りによって滅びの日を迎えることがウルモによって予言されていた。しかしトゥルゴンは美しい都への愛とその堅固さを恃む心からウルモの警告を無視し、ゴンドリンに留まり続けた。
はたしてマエグリンが王に秘密でエホリアスの囲みの外に出ていた折、モルゴスに捕らえられて拷問を受け、ゴンドリンの所在と秘密を売ってしまう。
祝祭である夏の門の当日、ゴンドリンはバルログ、龍、オーク、狼などからなる大軍に攻め入られ、壮烈な戦いの末に陥落し滅亡した。このことは「ゴンドリンの陥落」に歌われている。
広場では泉のエクセリオンがバルログの大将ゴスモグと相打ちになり、王家の殿原は王宮を守って討ち死にし、トゥルゴンは廃墟となった居城で壮絶な死を迎えた。
トゥオルはマエグリンを討ち果たすと、生き残りを連れてイドリルの用意した抜け道を使ってゴンドリンを脱出する。その道中、キリス・ソロナスで敵の待ち伏せを受け、グロルフィンデルがバルログと相打ちになって谷底に落下した。
その後トゥオル達はナン=タスレンを経由してシリオンの港へ逃れた。
『The History of Middle-earth』における記述†
「ゴンドリン」を含め七つの名称が存在すると記されている。登場順に、
- Gondobar (City of Stone)
- Gondothlimbar (City of the Dwellers in Stone)
- Gondolin (Stone of Song)
- Gwarestrin (the Tower of Guard)
- Gar Thurion (the Secret Place)
- Loth (flower)
- Lothengriol
王家を含め12の高家が存在することが記されている。家名と当主の名は以下の通り。
家名 | 当主 | ゴンドリン陥落時の動向 |
---|---|---|
王家 | トゥルゴン | 戦死 |
House of the White Wing | トゥオル | 脱出 |
House of the Mole | Meglin(マエグリン) | トゥオルに倒される |
House of the Swallow | Duilin | 戦死 |
House of the Heavenly Arch | Egalmoth | 脱出後、シリオン襲撃時に戦死 |
House of the Tree | Galdor | 脱出 |
House of the Pillar | Penlod | 戦死 |
House of the Tower of Snow | Penlod | |
House of the Golden Flower | グロルフィンデル | 脱出中に戦死 |
House of the Fountain | エクセリオン | 戦死 |
House of the Harp | Salgant | 生死不明 |
House of the Hammer of Wrath | Rog | 戦死 |
備考†
ゴンドリンの都とその陥落の物語は、トールキンの神話体系で最も初期に書かれたものの一つである。
『ホビットの冒険』でも、作中で手に入るエルフの名剣グラムドリング、オルクリスト、つらぬき丸がゴンドリンで作られたものであることが語られる。
クリストファ・トールキンは父の遺稿を編集して『The Fall of Gondolin』を発表した。
ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
さびし野に同様の地名が登場するがスペルが異なり(Gondrinn)、本項とは何の関係もない。
一方で種族を上のエルフに設定したときは、出身地のひとつとして本項のゴンドリンを選択可能(だが登場するのは名称だけで、実際にゴンドリンの土地などがゲーム内に実装されているわけではない)。
コメント†
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