エオウィン †
概要 †
カテゴリー | 人名 |
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スペル | Éowyn*1 |
その他の呼び名 | デルンヘルム(Dernhelm) ローハンの盾持つ乙女(Shieldmaiden of Rohan)*2 盾の腕の姫(Lady of the Shield-arm)*3 ローハンの白い姫君(White Lady of Rohan) |
種族 | 人間(ロヒアリム) |
性別 | 女 |
生没年 | 第三紀2995~不明 |
親 | エオムンド(父)、セオドウィン(母)、セオデン(養父) |
兄弟 | エオメル(兄) |
配偶者 | ファラミア |
子 | エルボロン(息子) |
解説 †
マーク(ローハン)の王セオデンの妹セオドウィンと軍団長エオムンドの間に生まれた娘で、エオメルの妹。
幼い頃に父エオムンドがオークに殺され、その後すぐ母も病を得て亡くなると、兄エオメルと共にセオデンに引き取られ、エドラスで彼の養子として育てられた。
エオウィンは勇猛で武芸に秀で、戦勲を求める心は男子に劣らなかったが、女の身であるため戦いに赴くことを許されず、その機会を得られなかった。
またその一方、義父セオデンが相談役のグリマによって気力を萎えさせられ、次第に耄碌していく姿を間近で見続けることになり、これが彼女の心痛と重荷の種にもなっていた。
婦人は背を向け、ゆっくりと建物の中にはいって行きました。入口をはいる時、かの女は振り向いて後ろを見返りました。静かな憐れみの色を目に浮かべて王を眺めるそのまなざしは沈痛で思慮深げでした。その顔は際立って美しく、長い髪は金色の川のようでした。銀の帯を腰に締めた白い長衣のその姿は背が高くほっそりしていましたが、けっして弱々しくは見えず、
鋼 のように強固な王家の娘と見えました。こういうわけで、アラゴルンはこの時初めてローハンの姫君、エオウィンを明るい外の光の中で見たのです。かれはエオウィンを美しいと思いました。そしてその美しさはまだ女にはなりきっていない、早春の朝のような冷ややかな美しさであると思いました。*4
ローハンとアイゼンガルドの戦争 †
密かにサルマンに間者として買収されていたグリマはエオウィンに邪心を抱き、常に瞼の下から彼女の姿を伺っていた。それに気づいた兄エオメルは激昂のあまり宮廷内で剣を抜き、グリマを切り捨てようとした。そのため王の命によりエオメルは投獄されてしまう。
しかし、エドラスにやってきたガンダルフら一行によってセオデンは癒され、気力を蘇らせる。主導権を取り戻したセオデンはグリマを追放し、エオメルを放免して王位継承者に指名した。この時エオウィンはガンダルフと共にやってきたアラゴルン二世と出会い、彼の中にある勇者の風格を認め、恋心に近い感情を抱くようになった。
サルマンの脅威を取り除くため、セオデンは西谷に進軍することになり、エオメルとアラゴルンもそれに同行する。しかしエオウィンには彼らが不在の間、残った国民を指揮する役目が与えられた。そのためエオウィンはエドラスで彼らを見送った後、民を率いて馬鍬砦へ避難した。
デルンヘルムとしてのゴンドールへの遠征 †
角笛城の合戦で勝利した後、ローハン全軍は馬鍬砦へ集結する。エオウィンは一足先に馬鍬砦にやってきた灰色の一行を出迎えるが、そこでアラゴルンが死者の道を行軍するつもりであることを知らされ、衝撃を受ける。はじめ彼女はアラゴルンを思い止まらせようと努めたが、それができないと悟ると自らの心の内を打ち明け、共に戦場に連れて行ってくれるよう懇願する。しかし聞き届けられず、アラゴルンは彼女を振り切って死者の道へ旅立った。
遅れてやってきたセオデンの元に、ゴンドールから援軍を要請する使者ヒアゴンが訪れると、セオデンはエオウィンに残った国民の指揮を任せ、ゴンドールへの長征に出発する。
この時、セオデンに小姓として召し抱えられたホビットのメリアドク・ブランディバックもまた、望みに反してエドラスに留め置かれることになった。アラゴルンから、メリーの戦いの身支度を整えることを頼まれていたエオウィンは、彼に兜や盾などを与える。その後、男装してデルンヘルムを名乗ったエオウィンは、メリアドクを連れてエルフヘルム麾下のエオレドに紛れ込み、密かにセオデンの長征に同行する。
一同がこの隊列のほとんど終わりまで来た時、その中に
面 を上げ、鋭い視線をホビットに投げかけた者がいました。若い男だなと、視線を返しながらメリーは思いました。背の高さも横幅も他の者ほどないようだ。メリーは若者の澄んだ灰色の目がきらっと光るのをとらえました。そしてその時かれは思わず身震いしました。というのは、その若者の顔が望みを持たぬ者の顔、死地を求めに行く者の顔であることがとっさに感じられたからでした。*5
ペレンノール野の合戦での勲 †
ロヒアリムの軍勢がペレンノールに達した時、デルンヘルムは同じ馬(風の道)に乗るメリアドクと共にエルフヘルムの陣を離れ、ぴったりとセオデンのそばに付き添い、合戦の最中も彼のそばを離れなかった。セオデンが倒れ、魔王が手にかけようと舞い降りてきた時、セオデンの共回りは全て打ち倒されるか恐怖に駆られた馬によって運び去られていたが、ただ一人デルンヘルムだけは馬を下りて踏みとどまり、魔王を阻む。
そして生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!という魔王の言葉に応え、自らの正体を明かして立ち向かった。
その時メリーはおよそこれほど場違いなものはないと思われるものを耳にしました。デルンヘルムが声をたてて笑ったように思われたのです。その澄んだ声は
鋼 が鳴り響くようでした。「しかしわたしは生き身の人間の男ではない! お前が向かい合っているのは女だ。わたしはエオウィン、エオムンドの娘だ。お前こそわたしの主君にして血縁である者とわたしの間に立って邪魔をしている。 …… 」
…… しかしかの女の秘密を守っていた兜 は落ち、その輝く髪が、束縛 から解 き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。海のような灰色を帯びた目はきびしく容赦 がありませんでしたが、その頰 には涙が流れていました。片手には剣を握り、もう一方の手には盾 を持ち上げて恐ろしい敵の凝視 に対していました。
…… ロヒアリムの乙女、王家の子の、細づくりながら鋼 の刃のように、美しいが、凄絶 なことよ。すばやい一撃を姫は加えました。熟練した致命的な一撃でした。*6
エオウィンは、魔王の乗る怪鳥の首を一刀のもとに切り落として魔王自身と対したが、魔王の放った黒い矛(メイス)の一撃で盾を左腕の骨ごと打ち砕かれてしまう。しかしエオウィンが自らの正体を明かしたことで、恐怖に打たれてうずくまっていたメリアドクが勇気を取り戻し、背後から魔王の膝の裏を塚山出土の剣で突き刺す。塚山出土の剣の一撃は魔王に致命的な打撃を与え、魔王の肉体を不滅にしていた呪魔を打ち破った。
エオウィンは最後の力をふりしぼって鉄の王冠と広い肩の間の何もない空洞に剣を突き刺して、魔王にとどめを刺す。かくして人間の男の手では討たれぬだろう(not by the hand of man will he fall.)*7とグロールフィンデルがかつて予言した魔王に滅びがもたらされ、エオウィンは偉大な勲を勝ち得た。
ファラミアとの出会いと指輪戦争後 †
エオウィンは魔王を剣で斃した時、魔王を刺す時に剣を使った右腕から黒の息に冒されて自らも倒れ、ミナス・ティリスの療病院に運び込まれる。そこでアラゴルン二世の治療を受けて黒の息から癒され、西軍が黒門まで遠征していった間そこに留まっていた。だが彼女には、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。
そんな中、エオウィンは同じく黒の息に冒されてアラゴルンに癒されていたファラミアと知り合って愛されるようになる。そして指輪所持者の使命が達成された日、彼女はファラミアの愛を受け入れ、戦い以外にも望みを持てるようになって、心も癒された。
エオウィンはミナス・ティリスに留まって療病院の患者たちの看護に従事した後、コルマルレンの野から帰還してきたアラゴルンら西軍をミナス・ティリスにて迎える。そしてアラゴルンの戴冠式に参列した後、エオメルらと共に戦後処理のため、一時エドラスへ帰郷する。その後、ミナス・ティリスを再訪してきたエオメルや、アラゴルン、ファラミアおよびホビット達、裂け谷やロスローリエンのエルフたち一行と、彼らと共に運ばれてきたセオデンの亡骸を迎えて、セオデンの葬儀に参列した。その後の追悼会で、エオメルによってエオウィンとファラミアの婚約が発表された。またエオウィンはメリアドク・ブランディバックに、ペレンノール野の合戦での勲を称えてマークの角笛を与えた。
やがてファラミアと結婚したエオウィンは、夫の領国であるイシリアンのエミン・アルネンに住まったという。『The Peoples of Middle-earth』によると、二人の間には息子エルボロンが生まれた。
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映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定 †
『二つの塔』で初登場。角笛城の合戦の前には、非戦闘員の女子供と馬鍬砦ではなく燦光洞に避難した(メイキング映像では、燦光洞内でウルク=ハイを相手に戦っているシーンもあるが、映画ではカットされている)。またエクステンデッド・エディションでは、セオドレドの葬儀の歌を古英語で歌っている。ヘルム峡谷への移動の際、レンジャー(野伏)として粗食に慣れているであろうアラゴルンをして苦渋の反応をさせるほどの料理の腕前を披露するシーンがあり、独自の性格付けがなされた。
『王の帰還』では、デルンヘルムの名は登場せず、メリーは最初から自分を馬に乗せた乗手の正体がエオウィンだと気がつく。また、魔王と対峙した時に正体を明かすタイミングが大きく異なっている。
ファラミアとのエピソードは省略されているが、アラゴルンの戴冠式・結婚式で、ファラミアとエオウィンが笑顔で並んでいる姿が登場する。また『王の帰還 エクステンデッド・エディション』では、療病院でエオウィンとファラミアが見つめ合うシーンや、西軍が黒門に出撃した後に語らうシーンが追加されており、その後の関係を示唆している。
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ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定 †
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