ビヨルン†
概要†
解説†
カルロックと闇の森の間にある土地に住む人物。普段は筋骨隆々の大男の姿をしているが、いつでも自由に毛皮を取り替えることで、黒い大熊の姿になることができた。
人の姿でいる時も十分に恐いのだが、熊になるとその恐ろしさは比べ物にならない。一歩間違えば食い殺されかねないほど気が荒いので、ソーリンとその仲間はガンダルフの助言により、とても注意深く彼に接触した。そのおかげで彼の好意を得ることに成功したが、もしガンダルフがいなかったらどうなっていたか判らない。
荒々しい気質とは裏腹に、お菓子作りやパン作りの達人という一面も持ち合わせる。特に蜂蜜を使ったお菓子は絶品。
彼の邸では、たいへんに賢い小馬や犬などの動物達がまるで召使のように仕えて働いていた。ビヨルン自身も動物を愛して肉喰はせず、蜂蜜やクリームなどを食べて暮らしていた。
人間としては西方語で会話することができるが、動物達にはまるでけもののほえる声をおりまぜたような、みょうな言葉を使って指示を出すことができ、また大熊になると熊の言葉を使って吠える。
そして木のそばに、顔じゅう黒いひげだらけの黒髪の大男が立っていました。むきだしの腕も足も大きく、こぶこぶの筋肉がもり上がっています。ひざの上までくる毛織りのかんたんなかぶり着を着ています。大男は大きな斧をついて、身をもたせていました。*2
「わしは一度、あのひとがこの見張り岩のてっぺんで、霧ふり山脈のほうに沈む月を見つめながら、ひとりですわっているすがたを見かけたことがある。その時わしは、クマの言葉で――奴らがほろびる日は近づいた。その時わしはもどっていくぞ、と深くうなる声をきいた。」*3
『ホビットの冒険』†
ビヨルンはラダガストと知り合いであり、ガンダルフはビヨルンのことを知っていたが、ビヨルンの方はガンダルフを知らなかった。
ゴブリン町でゴブリンに小馬と荷物を奪われたビルボと13人のドワーフは、ガンダルフの案内によりカルロックからビヨルンの邸へ向かい、彼の援助を求めることになる。その際ガンダルフはビヨルンの機嫌を損ねないよう、冒険譚で気を引きつつ一度に少人数ずつ彼に紹介した。ビヨルンはゴブリンを強く憎んでおり、一行が大ゴブリンを倒したことを知ると大いに喜び、彼らを邸に泊めて食事を与え、闇の森の入り口まで小馬を貸し与えるなどの援助を施してくれた。
五軍の合戦では、三軍(人間、エルフ、ドワーフ)への最後の援軍として大熊の姿をして現われ、彼一人で戦況を逆転せしめるほどの力を発揮。瀕死の状態だったソーリン二世を戦場から運び出し、ゴブリン軍の大将ボルグを踏み潰した。
合戦後はビルボとガンダルフと共に帰路につき、二人はしばらく客人として彼の邸に滞在した。
その後、ビヨルンは霧ふり山脈から闇の森にかけての一帯を取り仕切る大主公となった。彼の子孫の血筋には熊に変身する能力が受け継がれたが、ビヨルンほど強大な者は現われなかったという。
正体について†
『ホビットの冒険』でガンダルフはビヨルンのことを皮をとりかえるひと(skin-changer)であると述べ、「巨人が来る以前に山にいた大昔の大グマの末裔という説と、龍やゴブリンが来る以前からこの地に住んでいたはじめての人間の末裔という説があるが、おそらく後者」(要約)と説明している。
前者はおそらくモルゴス配下の巨狼などの動物変身系の悪霊を指していると思われるが、それらではないということになる。後者は明らかにエダインと共通の祖先から分かれた北方の自由の民を指している。
『二つの塔』でのアラゴルン二世の台詞や『追補編』の追補Fでも、ビヨルン一党は谷間の国の人間やロヒルリムの近縁であると述べられている。
ここからビヨルンとその一党は、谷間の人間の「ツグミ」、ロヒルリムの「馬」と同種で、かつそれ以上に深い「熊」との繋がりを持つ人間の一氏族だと考えられる。
トールキンは手紙で「ビヨルンは“皮をとりかえるひと”で、いささか魔術師めいたところはあるが、人間である*4」と述べている。
名前の由来†
beornは古英語で、戦士(warrior)や英雄(hero)の意味だが、語源である古ノルド語(Wikipedia:古ノルド語)のbjørn(björn)は熊(bear)の意味である。
邦訳『指輪物語』ではBeornが熊人ビヨルンや
英語の発音は「ベオルン」に近い。
映画『ホビット』における設定†
俳優 | ミカエル・パーシュブラント |
---|---|
日本語吹き替え | 磯部勉 |
『竜に奪われた王国』より登場。熊になっているときは理性を失う、家族をアゾグに殺された、自分も以前アゾグに囚われていた、変身能力を持つ一族の最後の者(変身能力を持たない他の生き残りがいるとも、文字通りビヨルン以外死に絶えてしまったとも解釈できる台詞になっている)などという、原作とは非常に隔たった独自のキャラクター設定がなされている。
眉、頬髯、頭髪及び背中の毛が一つに繋がっており、普通の人間よりも額が大きく隆起しているなど、変身を解いた状態でも熊の面影が残る顔立ちをしている。
原作にあった、ガンダルフが彼にこれまでの経緯を語りながらソーリンとその仲間をビヨルンの家に招き入れるシーンも描かれておらず、一行はオークの一隊と熊になったビヨルンから逃げるために全員で彼の家に駆け込んでいる。
エクステンデッド・エディションでは夜が明けた後、人間の姿に戻ったビヨルンに対し、ガンダルフがラダガストの名を出して自己紹介する場面や、ソーリンたちが順番にビヨルンの前に姿を現す場面など、原作に近いやりとりが追加されている。さらにドル・グルドゥルの死人占い師(ネクロマンサー)や魔王について、ガンダルフと話すシーンもある。
『決戦のゆくえ』における五軍の合戦には、ラダガストによって呼ばれた大鷲に運ばれて参加。エレボールの目前まで来ていたグンダバドからの新手のオークを、大鷲と共に襲う。そしてこれらのオークを壊滅させるほどに暴れ回り、五軍の合戦における人間、エルフ、ドワーフの危機を救った。だがビヨルン本人の台詞もほとんどなく、劇中での言及もない。エクステンデッド・エディションではわずかにビヨルンの戦闘シーンが増えているのと、ソーリンの葬儀に参加しているシーンが追加されている。
原作ではビルボとガンダルフは帰郷時、ビヨルンの家までは彼と共に旅をしたが、その描写もない。
なお、エクステンデッド・エディションにも含まれなかった製作途中の動画も公開されており、こちらではかなり大型のトロルをも倒す場面がある。また、同様にソーリンの葬儀に際したラダガストとガンダルフとの会話シーンの収録の様子も収録されている。ミカエル・パーシュブラントは2011年にコカイン服用で2度逮捕されているほか、2014年4月にも再度逮捕と5か月間の収監がされた。直接の言及はされていないが、ビヨルンのシーンの大部分が製作途中で中断されたとエクステンデッド・エディションで述べられている。
画像†
Iron Crown Enterprisesによる設定†
ビヨルンの設定に合わせビヨルン一党という種族が存在し、アトリドゥク語(Atliduk)、ワイルデュス語(Waildyth)という言語を使う。
ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
ビヨルンの設定に合わせ、Beorning(ビヨルン一党)というクラスが存在する。
コメント†
最新の6件を表示しています。 コメントページを参照