#author("2024-01-27T00:08:32+09:00;2020-06-21T03:00:43+09:00","","")
* &ruby(おど){躍};る&ruby(こうまてい){小馬亭}; [#p4f70707]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[地名]]|
|~スペル|Prancing Pony|
|~スペル|The Prancing Pony|
|~その他の呼び名|小馬亭(The Pony)、ブリー村の宿屋(Inn of Bree, Inn at Bree)|

** 解説 [#Explanation]

[[ブリー村]]にある古旅籠。数えられないほどの昔から代々バタバー一家によって経営されてきた宿屋で、後ろ脚で立つ肥えた白い[[小馬]]の看板を掲げる。[[指輪戦争]]の時代には[[バーリマン・バタバー]]が亭主で、彼の下で[[ボブ]]や[[ノブ]]が働いていた。

>ドアは開け放たれたままで、そこから明かりが流れ出ていました。アーチの真上にランプが一つついていて、その下に大きな看板が揺れていました。肥った白い小馬が後ろ肢で立っている看板です。ドアには白い字で「躍る小馬亭、バーリマン・バタバーの宿」と書いてありました。階下の窓には、厚いカーテンの向こうから明かりの洩れているところがたくさんありました。((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]]』「躍る小馬亭で」))

ブリー村は[[緑道]]と[[東街道]]の交差点の近くに位置するため、この宿は[[ブリー郷]]の[[人間]]や[[ホビット]]だけでなく、街道を旅する[[ドワーフ]]や[[アルノール]]の[[野伏]]、さらには[[魔法使い]][[ガンダルフ]]や[[トム・ボンバディル]]といった存在までもが立ち寄る稀有な場所だった。だが夜ごと小馬亭の集会室でかれらと寄り合うブリー郷の住人にとっては日常の風景であり、さして意識されていなかった。
ブリー郷で始まった[[喫煙>パイプ草]]の習慣は、この宿からブリー村に立ち寄る者たちの間に広まったという。

*** 構造 [#hfa39628]

[[ブリー山]]の西の麓、[[東街道]]が南へ向きを変えるところで街道に面して立つ。
沢山の窓がある三階建ての建物で、両翼館が後ろへ伸び、建物正面の両翼の間に広いアーチがくり抜かれて中庭に通じていた。アーチに入って左手に玄関がある。建物は背後の丘裾を一部削って建てられており、翼館の後部では三階の窓((邦訳では「二階の窓」とされているが、原語は"the second-floor windows"であり、英国英語でsecond-floorは三階のこと))は地面と同じ高さになる。北の翼館の一階には丸い窓も備えた[[ホビット]]用の部屋が一、二部屋ある。
内部には、客や[[ブリー郷]]の民が集う''集会室''(Common Room)、[[フロドたち>旅人たち]]が最初に案内され、[[馳夫]]と語らい、寝室を避けて泊まった''休憩室/客室''(the parlour)が登場している。この他、客の[[馬]]や[[小馬]]を繋ぎ留めておく厩がおそらく中庭にある。

*** [[指輪物語]]での記述 [#la8fdc4c]

[[裂け谷]]に向かう[[フロド・バギンズ]]達が、[[トム・ボンバディル]]の勧めによってここに立ち寄り、[[馳夫]]([[アラゴルン二世]])に出会うこととなる。
フロドは[[ガンダルフ]]の指示通り「[[山の下]]」の偽名を使ったが、集会室で[[ホビット庄]]の世間話を始めて調子に乗った[[ペレグリン・トゥック]]が「[[バギンズ>バギンズ家]]」の名を出してしまいそうになったため、咄嗟にごまかそうとしたフロドはテーブルの上に乗って[[歌>月に住む男 鈍重の巻]]を歌い、足を踏み外して“偶然”[[一つの指輪]]を指にはめてしまう。フロドの姿がかき消えたことで集会室は騒然となり、結果、おそらく[[しだ家のビル]]と[[南から来た男]]の密告によって[[黒の乗手>ナズグール]]の注意を引くことになってしまった。
その晩、宿は黒の乗手の襲撃を受ける。馳夫の忠告で寝室を避けたフロド達は危機を免れたが、黒の乗手によって厩につながれていた[[馬]]や[[小馬]]がすべて逃げてしまったため、宿泊客や亭主の[[バタバー>バーリマン・バタバー]]は大損害を被った(バタバーは[[メリアドク・ブランディバック]]をはじめ馬を失った客に弁償するはめになったが、その後ほとんどの馬が無傷で戻ってきたため、結局バタバーは格安で馬を手に入れた形となった)。

[[指輪戦争]]後、フロド達は[[ホビット庄]]へ帰る道中にもこの宿に立ち寄り、二泊した。その頃[[ブリー郷]]は南から来たよそ者たちの影響で治安が悪化しており、宿も不況であったが、フロド達が戻ってきたという噂を聞きつけた人々が集まり、久々の盛況となった。

*** その他 [#f51aadf8]

『[[追補編>指輪物語/追補編]]』「ドゥリンの一族」によると、[[第三紀]]2941年3月15日に旅から帰る途中で[[ブリー村]]に宿泊していた[[ソーリン二世]]と、休養のために[[ホビット庄]]へ向かっていた[[ガンダルフ]]がブリー村で偶然出会い、[[はなれ山>エレボール]]への遠征(『[[ホビットの冒険]]』)が計画される切っ掛けになった。
この時に二人が出会った場所は躍る小馬亭と推測されるが、直接の言及はない。

なお日本ではしばしば「''踊''る''子''馬亭」と表記されることもあるが、原語は'''dancing'''(舞踊)ではなく'''prancing'''(躍り上がる)であり、'''child horse/foal'''(子供の馬)ではなく'''pony'''(小さな馬)であるため、「''躍''る''小''馬亭」とするのが正しい。

*** 画像 [#md66e7ca]

&ref(AlanLeePrancingPony.jpg,,25%,アラン・リー作画による躍る小馬亭(フロドが一つの指輪で消えた瞬間));

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

[[フロド>フロド・バギンズ]]たちが[[ホビット庄]]から外界へと抜け出て、[[ホビット]]と[[人間]]が混在する混沌とした場所に入り込んだことなどを示すため、最初から不穏な空気を強調した演出になっている。
フロドと[[バタバー>バーリマン・バタバー]]のやりとりはほぼカットされており、[[ガンダルフ]]の手紙や、[[馬]]がいなくなった話もなく、フロドたちが帰郷時に立ち寄る場面も出てこない。
[[ピピン>ペレグリン・トゥック]]が口を滑らすのを防ぐため、フロドが歌を歌ってごまかそうとするシーンもない。原作と異なり、フロドが本名を隠していることなどの状況をよく知らないままついてくることになったピピンと[[メリー>メリアドク・ブランディバック]]が、そのままフロドを紹介しようとして、あわてて止めに行こうとしたフロドが転んだ拍子に[[一つの指輪]]が指にはまって姿が消えてしまい、騒ぎとなる。その直後再び姿を現したフロドが[[馳夫]]にいきなりつかまって部屋に連れて行かれるという展開となっている。また[[黒の乗手>ナズグール]]は、フロドが指輪をはめたことを直接感じ取ったように描かれており、宿に侵入した黒の乗手におびえてバタバーが隠れている場面がある。

*** グッズ [#f92d96d7]

#amazon(B004KLPL9A)
#amazon(B00AY7PRFW)
[[バーリマン・バタバー]]が経営する、[[ブリー村]]にある旅籠。数えられないほどの昔から代々バタバー一家によって経営されてきた宿で、[[人間]]と[[ホビット]]が共存する[[ブリー郷]]の環境に合わせて、ホビット専用の部屋もある。
この旅籠は、[[アルノール]]の[[野伏]]、[[街道>東街道]]を東西に旅する[[ドワーフ]]、さらには[[魔法使い]][[ガンダルフ]]や[[トム・ボンバディル]]といった存在までが立ち寄る稀有な場所であったが、ここの集会所で夜ごとかれらと寄り合う[[ブリー郷]]の住民にとっては日常の風景でありさして意識されていなかった。
#amazon(B004KLPL9A)

『[[指輪物語]]』では[[裂け谷]]に向かう[[フロド・バギンズ]]達が、[[トム・ボンバディル]]の勧めによってここに立ち寄り、[[馳夫]]に出会うこととなった。その晩に躍る小馬亭は[[黒の乗手]]の襲撃を受けたが、馳夫の忠告に従っていたためフロドを含めた宿泊客は皆無事だった。
またフロド達は[[ホビット庄]]への帰りの旅の道中にも、[[ガンダルフ]]と共に再び立ち寄っている。
** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

原作小説『[[ホビットの冒険]]』ではこの宿や[[ブリー郷]]、[[ブリー村]]についての言及はないが、『[[追補編>指輪物語/追補編]]』にある記述を元に、第二部『竜に奪われた王国』冒頭で、[[ソーリン>ソーリン二世]]と[[ガンダルフ]]がこの宿で出会う回想場面が描かれている。だが原作と異なって偶然ではなく、ガンダルフがソーリンに会いに来た形になっている。当時の宿の亭主はバーリマンの父(Butterbur Snr)で、ソーリンの注文に応じたウェイトレスはバーリマンの母のベッツィ・バタバー(Betsy Butterbur)(([[ピーター・ジャクソン]]の娘のカメオ出演))という設定。また店内でソーリンのことを睨んでいたごろつきのひとりは、[[しだ家のビル]]の父(Bill Ferny Snr)という設定になっている。

そこではソーリンは、行方不明になっている父[[スラーイン>スラーイン二世]]が[[焦茶の国>褐色国]]の近くにいたという噂を聞いて探しに行き、発見できずに戻ってきた途中という設定になっている。[[エクステンデッド・エディション]]では、さらにソーリンとガンダルフの会話シーンが長くなっており、スラーインについて語っている。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO]

&ref(ScreenShot_2019-08-06_133201_0.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における躍る小馬亭外観); &ref(ScreenShot_2019-08-05_212903_0.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における躍る小馬亭の酒場); &ref(ScreenShot00338.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における躍る小馬亭客室);

** コメント [#Comment]

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