* フェアノール [#he9a0bfb]
** 概要 [#q954dc12]

|~カテゴリー|人名|
|~スペル|Fëanor|
|~その他の呼び名|クルフィンウェ(Curufinwë)、フェアナーロ(Fëanáro)|
|~種族|[[エルフ]]([[ノルドール]])|
|~性別|男|
|~生没年||
|~親|[[フィンウェ]](父)、[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]](母)|
|~兄弟|[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]](異母弟)|
|~配偶者|[[ネアダネル]]|
|~子|[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]](息子)|

** 解説 [#fa5b2d50]

本来の名はクルフィンウェだが、母親に呼ばれた「火の精」の意であるフェアノール(フェアナーロの[[シンダール語]]形ファイノール(faenor)との混合形)の名でよく知られている。
[[フィンウェ]]と[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]の息子で、[[フィンゴルフィン]]と[[フィナルフィン]]の異母兄。妻の[[ネアダネル]]との間に[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]]の[[七人の息子>フェアノールの息子たち]]がある。
フェアノールは、[[ノルドール]]族の中でもっとも技芸に優れた者と言われ、[[フェアノール文字]]を考案し、[[シルマリル]]を製作した。[[パランティーア]]も彼の作と言われる。

*** シルマリルの制作 [#n5870645]

フェアノールは、父であるフィンウェが、ミーリエルの死後に[[インディス]]と再婚したことを喜ばなかった。フィンウェとインディスの息子である[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]]にも好意を抱かず、彼らとは離れて暮らした。フェアノールは自らの知識や技術の追求に没頭し、ついには[[シルマリル]]を制作する。だがフェアノールは自尊心により、シルマリルの輝きを自分と父、そして自分の息子たち以外の者に見せることを惜しむようになった。

*** フィンウェ一家の不和 [#p63445af]

やがてフェアノールとフィンゴルフィンは、己の自尊心のためにそれぞれの利益と財産を守るために汲々とするようになる。すると、シルマリルの輝きを渇望し、さらに[[ヴァラール]]と[[エルフ]]の仲を断ちたいと考えていた[[メルコール>モルゴス]]は、フェアノールとフィンゴルフィンの対立を煽る風説を流した。そしてついに、フェアノールがフィンゴルフィンに剣を向ける事件が発生する。
そのためフェアノールはヴァラールに召し出されて証言することになったが、この時メルコールの悪意が明らかとなる。だがフェアノールは無実とはされず、12年の間[[ティリオン>ティリオン(地名)]]を離れることを命じられた。フェアノールはティリオンを離れ、息子達と共に[[フォルメノス]]へ赴いた。フェアノールを愛するフィンウェも彼と行動を共にした。

やがてメルコールがフォルメノスにやってきてフェアノールを懐柔しようとするが、フェアノールはメルコールの真意を見抜き、メルコールをフォルメノスから追い出す。

*** メルコールによるシルマリル略奪とフィンウェ殺害、フェアノールによるノルドール扇動 [#qf53d874]

[[マンウェ]]は[[タニクウェティル]]で祝宴を開き、ノルドールの間の不和を取り除こうとする。この宴に出席したフェアノールは、[[フィンゴルフィン]]の「兄(フェアノール)を許し、一切の不満を忘れてその後についていく」という誓いを受け入れ、手を取って和解する。だがこの時ヴァリノールの[[二本の木]]が、メルコールと[[ウンゴリアント]]によって枯らされた。
さらに、メルコールによって[[フォルメノス]]にて[[フィンウェ]]が殺され、[[シルマリル]]が奪われたという知らせがフェアノールのもとにもたらされる。父フィンウェのことを非常に愛していたフェアノールは、メルコールを「モルゴス」と呼び、復讐とシルマリルの奪回を誓う。彼は逃亡したモルゴスを追うため、制止する[[ヴァラール]]に反して[[ノルドール]]を扇動し、ヴァラールの束縛を逃れて自由を得るのだと[[中つ国]]への帰還を促す。

*** フェアノールの誓言 [#swear]

フェアノールと[[彼の七人の息子たち>フェアノールの息子たち]]は、相手が誰であろうと[[シルマリル]]を持つ者を、復讐と憎悪をもって追跡するという誓言を立てる。

>そこでフェアノールは、聞くだに恐ろしい誓言を立てた。かれの七人の息子たちも直ちにかれの傍らにすっくと立って、共にまったく同じ誓言を立てた。かれらの抜き身の剣は、松明の明かりに血のように赤く照り映えた。たとえ[[イルーヴァタール]]の御名によろうと、何人もこれを破ること、あるいは取り消すことのできぬ誓言を立てた。これを守らぬようなことがあれば常闇に呑まれるべしと言い、[[マンウェ]]の名を呼んで証人になり給えと言い、ついで[[ヴァルダ]]の名を、そして[[タニクウェティル]]の聖なる山を証人に頼み、[[ヴァラ]]であれ、鬼神であれ、[[エルフ]]であれ、まだ生まれておらぬ[[人間]]であれ、あるいは、偉大なると卑小なるとを問わず、善なると悪なるとを問わず、世の終わりの日まで時が世界にもたらすべきいかなる被造物であれ、かれらから[[シルマリル]]の一つを奪う者、手許に置く者、所有する者は誰であれ、この世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡するであろうと誓った。
かくの如く、[[マイズロス]]と[[マグロール]]と[[ケレゴルム]]、[[クルフィン]]と[[カランシア]]、[[アムロド]]と[[アムラス]]の七人の[[ノルドール]]の王子たちは、口に出して誓った。この恐るべき言葉を聞いて怯む者は多かった。なぜなら、かく誓われた以上は、善悪を問わず、いかなる誓言であれ、これを破ることはならず、その誓言は世界の果てまで、誓言を守る者をも破る者をも追いかけていくであろうからだ。((『[[シルマリルの物語]]』第九章))

この誓言はフェアノールの死後もその七人の息子たちを呪縛し続け、ついには彼らの身を滅ぼすことになる。
だがフェアノールは、全ノルドール族の9割もの賛同者を得て、中つ国への進軍を開始した。

***同族殺害とマンドスの呪い [#s65bc8a8]

フェアノールは[[アルクウァロンデ]]に向かい、[[テレリ]]を説得して彼らを同行させ、彼らが持つ船を手に入れて[[大海]]を渡ろうと考える。だがフェアノールは、テレリやその王である[[オルウェ]]の説得に失敗する。するとフェアノールは、自らの軍勢を率いてアルクウァロンデを襲撃し、テレリとの戦闘の後、船を奪った。これが最初のエルフによる[[同族殺害]]である。ノルドールは陸路と海路に分かれ[[アラマン]]に至るが、その地で同族殺害の咎によって[[マンドスの呪い]]を宣告される。これを見た[[フィナルフィン]]は進軍をやめて引き返したが、フェアノールへの誓いに縛られていた[[フィンゴルフィン]]と、フィンゴルフィンの息子たちを見捨てられなかったフィナルフィンの子供たちは進軍を続けざるをえなかった。

ノルドールは、アラマンから[[ヘルカラクセ]]を横断して[[中つ国]]に向かうことになったが、船の数は足りず、かといって船を使わずにヘルカラクセを横断することは無謀すぎた。だが時間が経つにつれ、ノルドールの中からフェアノールに対する不満が上がるようになった。
そこでフェアノールは、自らに忠実な者だけを船に乗せて船出し、[[フィンゴルフィン]]をアラマンに残す。[[ランモス]]に上陸したフェアノールは、船をアラマンに返すことをせずに[[ロスガール]]で燃やしてしまった。
このノルドールの一族同士の裏切りが、[[同族殺害]]と、ノルドール族に背負わされた運命から最初に生じた果実であった。

*** フェアノールの死 [#s69278e2]

フェアノールの軍勢は[[ヒスルム]]に入り、[[ミスリム]]で野営の準備を始める。一方、[[ロスガール]]で焼かれた船の炎を見た[[モルゴス]]の軍勢は、まだ準備が整っていないフェアノールの軍勢を襲撃した([[ダゴール=ヌイン=ギリアス]])。
フェアノールの軍勢は数において劣り、不意をつかれたにも関わらず速やかに勝利を収めた。だがフェアノール自身は怒りのあまり味方から突出して敵に包囲され、[[バルログ]]の首領[[ゴスモグ>ゴスモグ(バルログ)]]によって致命傷を負った。フェアノールは、自分に追いついた息子たちによって救出された後、ミスリムに引き揚げる途中の[[エイセル・シリオン]]に近い[[エレド・ウェスリン]]の山腹で、自らの死期を悟って足を止めさせた。彼は死を前にした予見の力によって、[[ノルドール]]族のいかなる力をもってしても[[モルゴス]]の[[サンゴロドリム]]の城塞を覆すには至らないことを悟ったが、それを口に出そうとはせず、モルゴスの名を三度罵り、息子たちに誓言の死守と父の仇を討つことを託して死んだ。彼の魂は火のように燃え、自らの肉体を灰にして飛び去ったという。

>そしてかれは死んだが、埋葬もされず、墓も造られなかった。なぜなら、かれの霊魂は火のように激しく燃えていたので、それが肉体を飛び去る時、肉体は燃えて灰となり、煙のように運び去られたからである。かれと似た者は二度と再び[[アルダ]]には現われず、かれの霊魂も[[マンドスの館]]を離れることはなかった。
[[ノルドール族>ノルドール]]の最強の者は、かくの如くして逝った。かれの所為から、ノルドール族の最も世に知られる功業も、痛恨極まりない悲しみも生じたのである。((『[[シルマリルの物語]]』第十三章 ))

*** フェアノール王家(House of Fëanor) [#House]

フェアノールとその息子たちの家系はフェアノール王家と呼ばれた。本来は[[ノルドール]]の[[上級王]]の位の継承権も[[フィンウェ]]の長子であるフェアノールの家系に属していたが、フェアノールの死後、その長男である[[マイズロス]]が[[フィンゴルフィン]]の長男で従兄弟である[[フィンゴン]]に救出されて[[サンゴロドリム]]から生還した際、[[アラマン]]での裏切りの謝罪としてフェアノールの家系の王位継承権を放棄して[[フィンゴルフィンの家系>フィンゴルフィン#House]]へと譲渡した。これによってフェアノールの家系は「奪われたる者たち」と呼ばれたが、これはノルドールの上級王の王権と[[シルマリル]]を二つながら喪失したことによるという。
[[フェアノールの息子たち]]はいずれもフェアノールの誓言の呪いによって、再三の[[同族殺害]]を犯した末に非業の死を遂げた。五男[[クルフィン]]の息子でフェアノールの孫にあたる[[ケレブリンボール]]のみが[[第二紀]]まで生き延びて[[エレギオン]]の領主となり、父や祖父と同様名工として名を馳せた。だがケレブリンボールは、アンナタールと名乗って近づいてきた[[サウロン]]に誑かされて[[力の指輪]]を製作し、後にサウロンの正体と思惑に気づくと彼に抵抗したが、捕らえられて拷問にかけられた末に死亡した。これによって[[中つ国]]におけるフェアノールの家系は途絶えた。((『[[The History of Middle-Earth]]』によると、フェアノールの次男[[マグロール]]には妻子があったとされるため、[[アマン]]においてか、もしくは女系ではフェアノールの血統は残されている可能性もある。))
[[フェアノールの息子たち]]はいずれもフェアノールの誓言の呪いによって、再三の[[同族殺害]]を犯した末に非業の死を遂げた。五男[[クルフィン]]の息子でフェアノールの孫にあたる[[ケレブリンボール]]のみが[[第二紀]]まで生き延びて[[エレギオン]]の領主となり、父や祖父と同様名工として名を馳せた。だがケレブリンボールは、アンナタールと名乗って近づいてきた[[サウロン]]に誑かされて[[力の指輪]]を製作し、後にサウロンの正体と思惑に気づくと彼に抵抗したが、捕らえられて拷問にかけられた末に死亡した。これによって[[中つ国]]におけるフェアノールの家系は途絶えた。((『[[The History of Middle-Earth]]』によると、フェアノールの次男[[マグロール]]と四男[[カランシア]]は結婚していたとされるため、[[アマン]]においてか、もしくは女系ではフェアノールの血統は残されている可能性もある。))

『[[指輪物語]]』作中で[[フロド・バギンズ]]一行が目にした[[モリアの壁]]には、[[ケレブリンボール]]が描いた[[イシルディン]]の文様の中央にフェアノール王家の星の紋章があった。

** コメント [#u8f2b69e]

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