#author("2023-08-13T12:31:36+09:00;2023-08-07T14:56:48+09:00","","")
* フェアノール [#he9a0bfb]
** 概要 [#q954dc12]

|~カテゴリー|人名|
#contents

** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Fëanor|
|~その他の呼び名|クルフィンウェ(Curufinwë)、フェアナーロ(Fëanáro)|
|~種族|[[エルフ]]([[ノルドール]])|
|~性別|男|
|~生没年||
|~生没年|[[二つの木の時代]](1169)~†(1497)年|
|~親|[[フィンウェ]](父)、[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]](母)|
|~兄弟|[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]](異母弟)|
|~兄弟|[[フィンディス]]、[[フィンゴルフィン]]、[[イーリメ]]、[[フィナルフィン]](異母妹弟)|
|~配偶者|[[ネアダネル]]|
|~子|[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]](息子)|
|~子|[[マエズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシル]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]](息子)|

** 解説 [#fa5b2d50]
** 解説 [#Explanation]

本来の名はクルフィンウェだが、母親に呼ばれたフェアノール(フェアナーロの[[シンダール語]]形)の名(「火の精」の意)でよく知られている。
[[フィンウェ]]と[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]の息子で、[[フィンゴルフィン]]と[[フィナルフィン]]の異母兄。妻の[[ネアダネル]]との間に[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]]の息子がある。
フェアノールは、[[ノルドール]]族の中でもっとも技芸に優れた者と言われ、[[フェアノール文字]]を考案し、[[アマン]]で[[シルマリル]]を作った([[パランティーア]]も彼の作と言われる)。
|>|>|~[[ノルドール]]の[[上級王]]|h
|CENTER:初代&br;[[フィンウェ]]&br;?~1495|CENTER:第2代&br;''フェアノール''&br;[[二つの木の時代]]1495~1497年|CENTER:第3代&br;[[フィンゴルフィン]]&br;[[第一紀]]5~456|

*** シルマリルの制作 [#n5870645]
[[ノルドール]]の[[上級王]][[フィンウェ]]と[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]の長子で、[[フィンゴルフィン]]と[[フィナルフィン]]の異母兄。妻の[[ネアダネル]]との間に[[マエズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシル]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]]ら[[七人の息子>フェアノールの息子たち]]がある。
[[ノルドール]]族の史上もっとも技芸に優れた者と言われ、[[フェアノール文字]]を考案し、[[パランティール]]も彼の作と言われる。わけても大宝玉[[シルマリル]]には[[アルダ]]の運命が閉じ込められていると言われ、[[上古]]の[[宝玉戦争]]の中心となった。

フェアノールは、父であるフィンウェが、ミーリエルの死後に[[インディス]]と再婚したことを喜ばなかった。フィンウェとインディスの息子である[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]]にも好意を抱かず、彼らとは離れて暮らした。フェアノールは自らの知識や技術に没頭し、[[シルマリル]]を制作する。だがフェアノールは自尊心により、シルマリルの輝きを自分と父、そして自分の息子達以外の者に見せることを惜しむようになった。
>かれは背が高く、見目形麗しく、支配する力を持っていた。目は射るように鋭く輝き、髪は黒々としていた。目的とするものがあれば、何であれ、断固として熱心にこれを追求した。助言によってかれの行動を変え得た者は数えるほどであり、力によって変え得た者は皆無である。かれは当時にあっても、あるいはそれ以後も、全ノルドール族中、最もすぐれた洞察力と、最も熟練した技の持ち主とされた。((『[[シルマリルの物語]]』「フェアノールと鎖から解き放たれたメルコールのこと」))

*** 生い立ちからシルマリルの制作まで [#n5870645]

フェアノールが誕生して間もなく、彼を産むことで心身共に消耗した母[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]は死去した。妻を失った父[[フィンウェ]]はフェアノールを溺愛したが、フェアノールが青年期にさしかかった頃に旧友[[イングウェ]]の近親者であった[[インディス]]と再婚した。
フェアノールは父の再婚を喜ばなかった。フィンウェとインディスの息子である[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]]にもあまり好意を抱かず、彼らとは離れて暮らした。

フェアノール自身は、青年期のはじめに[[ネアダネル]]と結婚し、彼女の父[[マフタン]]から鍛冶と石工の技を学んだ。
この時期、フェアノールは自らの知識や技術の追求に没頭し、[[フェアノール文字]]や、[[天然のものよりも強い光を発する人工の宝石>ノルドールの宝石]]、[[マンウェ]]の[[鷲>大鷲]]の目のように[[遠方の物事を見ることができる石>パランティール]]といった多くの偉大な発明を成した。

心身ともに成熟し、持てる能力を完全に使いこなすようになったフェアノールは、彼の最高傑作である[[シルマリル]]を制作するにいたる。
この三つの宝玉には[[ヴァリノール]]の[[二つの木]]の光が生きたまま込められていた。彼のシルマリル制作には、近づきつつある運命の予感があったのだとも言われている。結局はシルマリルの中にのみ、ヴァリノールの光が不滅のまま保たれることになったからである。
シルマリルを目にした者は誰もが驚嘆と喜びに満たされた。しかしフェアノールの心は自ら作ったこの作品に堅く縛り付けられており、やがてフェアノールは自尊心から、シルマリルの輝きを自分と父、そして自分の息子たち以外の者に見せることを惜しむようになっていった。

*** フィンウェ一家の不和 [#p63445af]

やがてフェアノールとフィンゴルフィンは、己の自尊心のためによりそれぞれの利益と財産を守るために汲々とするようになる。すると、シルマリルの輝きを渇望し、さらに[[ヴァラール]]と[[エルフ]]の仲を断ちたいと考えていた[[メルコール>モルゴス]]は、フェアノールとフィンゴルフィンの対立を煽る風説を流した。そしてついに、フェアノールがフィンゴルフィンに剣を向ける事件が発生する。
そのためフェアノールはヴァラールに召し出されて証言することになったが、この時メルコールの悪意が明らかとなる。だがフェアノールは無実とはされず、12年の間[[ティリオン>ティリオン(地名)]]を離れることを命じられた。フェアノールはティリオンを離れ、息子達と共に[[フォルメノス]]へ赴いた。フェアノールを愛するフィンウェも彼と行動を共にした。
やがてフェアノールと[[フィンゴルフィン]]は、己の自尊心からそれぞれの利益と財産を守るために汲々とするようになる。
すると、[[シルマリル]]の輝きを渇望し、さらに[[ヴァラール]]と[[エルフ]]の仲を離間させたいと考えていた[[メルコール>モルゴス]]は、[[ノルドール]]族の間に未踏の[[中つ国]]への憧憬を植え付け、さらにフェアノールとフィンゴルフィンの対立を煽る風説を流した。
フェアノール自身はメルコールの言葉に直接耳を傾けたことはなかったが、同族間で交わされる流言は彼の心に火を付けた。フェアノールはヴァラールへの叛逆と中つ国への帰還の意志を公然と口にし、そのため[[ティリオン>ティリオン(地名)]]は騒然となる。そしてついに、調停のため[[フィンウェ]]が設けた席上で、フェアノールがフィンゴルフィンに剣を向ける事件が発生する。

やがてメルコールがフォルメノスにやってきてフェアノールを懐柔しようとするが、フェアノールはメルコールの真意を見抜き、メルコールをフォルメノスから追い出す。
そのためフェアノールは[[審判の輪]]に召し出されてヴァラールの前で証言することになったが、この調査によりメルコールの悪意が明らかとなる。だがフェアノールは無罪とはされず、同族に剣を向けて平和を乱した罪により、12年の間ティリオンを離れることを命じられた。フェアノールはティリオンを離れ、息子達と共に[[フォルメノス]]に住んだ。フェアノールを愛するフィンウェも彼と行動を共にした。

*** フェアノールによるノルドール扇動と中つ国への帰還 [#qf53d874]
やがてフォルメノスで謹慎中のフェアノールのもとに、突然メルコールが姿を現わす。メルコールは自らの“予言”が実現したことを語り、さらなるヴァラールへの反抗を促そうとしたが、フェアノールは友情を装う彼の仮面の裏にシルマリルへの抑えがたい渇望があることを見抜く。恐怖に駆られながらも、フェアノールはメルコールを罵ってその鼻先で扉を閉ざし、彼を追い払った。

[[マンウェ]]は[[タニクウェティル]]で祝宴を開き、ノルドールの間の不和を取り除こうとする。この宴に出席したフェアノールは、フィンゴルフィンの手を取って和解する。だがこの時ヴァリノールの[[二本の木]]が、メルコールと[[ウンゴリアント]]によって枯らされた。
さらに[[フォルメノス]]にて、メルコールによって[[フィンウェ]]が殺され[[シルマリル]]が奪われたという知らせがフェアノールにもたらされる、父フィンウェのことを非常に愛していたフェアノールは、メルコールを「モルゴス」と呼び、復讐とシルマリルの奪回を誓う。彼は逃亡したモルゴスを追うため、制止する[[ヴァラール]]に反して[[ノルドール]]を扇動し、ヴァラールの束縛を逃れて自由を得るのだと[[中つ国]]への帰還を促す。
*** メルコールによるシルマリル略奪とフィンウェ殺害、フェアノールによるノルドール扇動 [#qf53d874]

*** フェアノールの誓言と同族殺害 [#swear]
[[マンウェ]]は[[タニクウェティル]]で祝宴を開き、[[ノルドール]]の間にある不和を取り除こうとする。フェアノールは渋々ながら出席し、その席上で[[フィンゴルフィン]]が誓った「兄(フェアノール)を赦し、一切の不満を忘れて、彼が先に立って導くなら自分はその後についていく」という言葉を一応は受け入れ、手を取って和解した。
だがこの時[[二つの木]]が、[[メルコール>モルゴス]]と[[ウンゴリアント]]によって枯死させられ、[[ヴァリノール]]が暗闇に襲われる。[[ヤヴァンナ]]は、[[シルマリル]]に保存された光を取り出せば二つの木を蘇生させることができると訴えたが、フェアノールはシルマリルを引き渡すことを拒否する。さらに[[フォルメノス]]より、[[フィンウェ]]がメルコールに殺され、シルマリルが奪われたという報せがもたらされた。
父フィンウェのことを何よりも愛していたフェアノールは、メルコールを「[[モルゴス]]」と呼んで呪い、暗闇に走り去った。

フェアノールと彼の7人の息子達は、相手が誰であろうと[[シルマリル]]を持つ者を、復讐と憎悪をもって追跡するという誓言を立てる。そしてフェアノールは、全ノルドール族の9割もの賛同者を得て、中つ国への進軍を開始する。
フェアノールは[[アルクウァロンデ]]に向かい、[[テレリ]]を説得して彼らを同行させ、彼らが持つ船を手に入れて[[大海]]を渡ろうと考える。だがフェアノールは、テレリやその王である[[オルウェ]]の説得に失敗する。するとフェアノールは、自らの軍勢を率いてアルクウァロンデを襲撃し、テレリとの戦闘の後、船を奪う([[同族殺害]])。やがてノルドールは陸路と海路に別れ、[[アラマン]]に至る。
やがて不意に[[ティリオン>ティリオン(地名)]]に現れたフェアノールは、ノルドール族を前に大演説を行い、モルゴスへの復讐とシルマリルの奪還を訴え、[[ヴァラール]]の束縛から逃れて自由を得るために[[中つ国]]へと帰還するよう扇動した。彼の言葉には非常に強い力がこもっていたが、その多くはモルゴスがかつて語った虚言に発することであった。

ノルドールは、アラマンから[[ヘルカラクセ]]を横断して[[中つ国]]に向かうことになったが、船の数は足りず、かといって船を使わずにヘルカラクセを横断することは無謀すぎた。だが時間が経つにつれ、ノルドールの中からフェアノールに対する不満が上がるようになった。
そこでフェアノールは、自分たちに忠実な者だけを船に乗せて自分たちだけで船出し、[[フィンゴルフィン]]をアラマンに残す。[[ランモス]]に上陸したフェアノールは、船をアラマンに返すことをせずに[[ロスガール]]で燃やしてしまった。
**** フェアノールの誓言 (Oath of Fëanor) [#Oath]

この時[[ティリオン>ティリオン(地名)]]において、フェアノールと[[彼の七人の息子たち>フェアノールの息子たち]]は、相手が誰であろうと[[シルマリル]]を持つ者を、復讐と憎悪をもって追跡するという誓言を立てた。

>そこでフェアノールは、聞くだに恐ろしい誓言を立てた。かれの七人の息子たちも直ちにかれの傍らにすっくと立って、共に全く同じ誓言を立てた。かれらの抜き身の剣は、松明の明かりに血のように赤く照り映えた。たとえ[[イルーヴァタール]]の御名によろうと、&ruby(なんぴと){何人};もこれを破ること、あるいは取り消すことのできぬ誓言を立てた。これを守らぬようなことがあれば&ruby(とこやみ){常闇};に呑まるべしと言い、[[マンウェ]]の名を呼んで証人になり給えと言い、ついで[[ヴァルダ]]の名を、そして[[タニクウェティル]]の聖なる山を証人に頼み、[[ヴァラ]]であれ、鬼神であれ、[[エルフ]]であれ、まだ生まれておらぬ[[人間]]であれ、あるいは、偉大なると卑小なるとを問わず、善なると悪なるとを問わず、世の終わりの日まで時が世界にもたらすべきいかなる被造物であれ、かれらから[[シルマリル]]の一つを奪う者、手許に置く者、所有する者は誰であれ、この世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡するであろうと誓った。
かくの如く、[[マエズロス]]と[[マグロール]]と[[ケレゴルム]]、[[クルフィン]]と[[カランシル]]、[[アムロド]]と[[アムラス]]の七人の[[ノルドール]]の王子たちは、口に出して誓った。この恐るべき言葉を聞いて怯む者は多かった。なぜなら、かく誓われた以上は、善悪を問わず、いかなる誓言であれ、これを破ることはならず、その誓言は世界の果てまで、誓言を守る者をも破る者をも追いかけていくであろうからだ。((「ノルドール族の逃亡のこと」))

この誓言はフェアノールの死後もその七人の息子たちを呪縛し続け、ついには彼らの身を滅ぼすことになる。

*** 同族殺害とマンドスの呪い [#s65bc8a8]

こうしてフェアノールは、[[アマン]]の[[ノルドール]]族の九割もの賛同者を得て、[[中つ国]]への進軍を開始した。フェアノールは[[アルクウァロンデ]]に向かい、[[テレリ]]を説得して彼らの船で[[大海]]を渡ろうと考える。だがフェアノールは、テレリやその王である[[オルウェ]]を説得することができなかった。そこでフェアノールは自らの軍勢を集めて力ずくで船を奪い取ろうとし、それを阻止しようとするテレリとの戦闘に発展する。これがエルフによる最初の[[同族殺害]]である。
双方に多数の死者を出した末に、装備に勝るノルドール軍が勝利を収め、テレリの船は強奪された。ノルドールは陸路と海路に分かれ[[アラマン]]に至るが、その地でかれらは同族殺害の咎により[[マンドスの呪い]]を宣告される。
だがフェアノールと息子たちはあくまで進軍を取りやめようとしなかった。[[フィナルフィン]]は進軍をやめて引き返したが、フェアノールへの誓いに縛られていた[[フィンゴルフィン]]と、フィンゴルフィンの息子たちを見捨てられなかったフィナルフィンの子供たちも進軍を続けざるをえなかった。

しかしアラマンから[[ヘルカラクセ]]を横断して一度に[[中つ国]]に向かうには船の数が少なく、かといって船を使わずにヘルカラクセを横断することは無謀にすぎた。さらに時間が経つにつれ、ノルドールの中からフェアノールに対する不満が上がるようになる。
そこでフェアノールは、自らに忠実な者だけを先に船に乗せて船出し、[[フィンゴルフィン]]達をアラマンに置き去りにする。中つ国の[[ランモス]]に上陸したフェアノールは、船をアラマンに返すことをせずに[[ロスガール]]で燃やしてしまった。
このノルドール同士の裏切りが、同族殺害と、ノルドール族に背負わされた運命から生じた最初の果実であった。

*** フェアノールの死 [#s69278e2]

フェアノールの軍勢は[[ヒスルム]]に入り、[[ミスリム]]で野営の準備を始める。一方、[[ロスガール]]で焼かれた船の炎を見た[[モルゴス]]の軍勢は、まだ準備が整っていないフェアノールの軍勢を襲撃する([[ダゴール=ヌイン=ギリアス]])。
劣勢だったフェアノール軍だが、モルゴス軍に対し勝利を収める。だがフェアノール自身は怒りのあまり味方から突出してしまった。その結果[[バルログ]]の首領[[ゴスモグ>ゴスモグ(バルログ)]]によって倒される。彼は救援に来た息子達によって救われたが、致命傷のために息絶えた。
フェアノールの軍勢は[[ヒスルム]]に入り、[[ミスリム]]で野営の準備を始める。一方、[[ロスガール]]で焼かれた船の炎を見た[[モルゴス]]の軍勢は、まだ準備が整っていないフェアノールの軍勢を襲撃した([[ダゴール=ヌイン=ギリアス]])。
フェアノールの軍勢は数において劣り、不意をつかれたにも関わらず速やかに勝利を収めた。だがフェアノール自身は怒りのあまり味方から突出して敵に包囲され、さらに[[バルログ]]達がやって来た。[[ドル・ダエデロス]]の境界で孤立無援となったフェアノールは火に包まれ、多くの傷を負いながらも長い間抵抗していたが、とうとうバルログの首領[[ゴスモグ>ゴスモグ(バルログ)]]によって致命傷を負った。
フェアノールは追い付いてきた息子たちによって救出された後、ミスリムに引き揚げる途中の[[エイセル・シリオン]]に近い[[エレド・ウェスリン]]の山腹で、自らの死期を悟って足を止めさせた。[[サンゴロドリム]]の城砦を目にしたフェアノールは、死を前にした予見の力により、[[ノルドール]]族のいかなる力をもってしてもそれを覆すには至らないことを悟ったが、そのことを口に出そうとはせず、モルゴスの名を三度罵り、息子たちに誓言の死守と父の仇を討つことを託して死んだ。彼の魂は火のように燃え、自らの肉体を灰にして飛び去ったという。

>「そしてかれは死んだが、埋葬もされず、墓も造られなかった。なぜなら、かれの霊魂は火のように激しく燃えていたので、それが肉体を飛び去る時、肉体は燃えて灰となり、煙のように運び去られたからである。」(([[シルマリルの物語]] ))
>そしてかれは死んだが、埋葬もされず、墓も造られなかった。なぜなら、かれの霊魂は火のように激しく燃えていたので、それが肉体を飛び去る時、肉体は燃えて灰となり、煙のように運び去られたからである。かれと似た者は二度と再び[[アルダ]]には現われず、かれの霊魂も[[マンドスの館]]を離れることはなかった。
[[ノルドール族>ノルドール]]の最強の者は、かくの如くして逝った。かれの所為から、かれらノルドール族の最も世に知られる功業も、痛恨極まりない悲しみも生じたのである。((「ノルドール族の中つ国帰還のこと」 ))

** コメント [#u8f2b69e]
*** フェアノール王家 (House of Fëanor) [#House]

- 強固すぎる意志と傲慢不遜な態度ゆえ、非常に付き合いづらい人物である事は間違いない。シルマリルリオン中でも触れているように、フィンウェ一家の不和がその性格の遠因になっているのかもしれないけれど。 -- A3
- スーパーエネルギッシュなお人。死亡の際には、肉体が残らずに燃え尽きるほどとは・・・これほどまでの異才ぶりならば、性格あまりよろしくないのは仕方がないかな?(と、周りのヴァラールやエルフたちも思っていたのに違いない) -- ボリーの用心棒
- 指導者でなければ、まだ救いようがあったんですがね……。ノルドール没落の原因は半分が彼でしょうね(あと半分はメルコオル) -- 「ど」の字 &new{2007-10-19 (金) 18:56:46};
- シルマリルを作ろうと思い立ったきっかけが姪であるガラドリエルの髪の毛を見た時だそうですね。それで髪の毛をくれるよう三回もガラドリエルに頼んだのに三回とも断られたとか。ギムリが彼女の髪を貰ったことを知ったらどう思うんでしょう? --  &new{2008-10-30 (木) 12:57:17};
- ↑激しく怒ったでしょうね。まあそんな狭量かつ独占欲の強い性格の者だからガラドリエルは髪の毛を与えなかったのでしょうが。個人的異能が無かったら、恐らく言葉を交わす友人の一人も居なかったでしょうね。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-15 (月) 19:10:57};
- どうも不当に低評価となっているような気がしなくもありません。確かに問題の多い性格の人ではありましたが、それは複雑な家庭環境やモルゴスの謀略が落とした陰の影響をもっとも強く受けてしまったから、という部分もあるわけです。彼が本当に単なる狭量で卑小な人物であったなら、いかにフィンウェの長子であったとはいえ、誰も彼の演説を聞いてアマンの地を捨てようなどとは思わなかったでしょう。イシルドゥアやボロミアがそうであるように、不完全ではあっても、間違いなく英雄と呼ぶに足る人物ではあると思われます。 --  &new{2009-06-16 (火) 03:56:05};
- ↑……それはどうでしょうか。>>不当に低評価  自分はこの人物を俯瞰して、ついこの間死んだ韓国の元大統領を思い起こしてしまいましたよ。彼の存在は、不肖の息子を愛してくれた父親も、子供たちも、エルフ共同体も、何一つ幸福に出来ませんでした。彼には十分な理性があったのに、それを活かす事が出来ませんでした。失敗すると分かっていて、負けると分かっていて、それでも止められない愚劣な指導者でした。理と法より己の感情を優先する指導者失格の人格にしか見えないのですが。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-16 (火) 22:08:57};
- むしろ不完全なほうが印象が強いから英雄扱いされやすい。逆にトゥオルとかフィナルフィンとかアナリオンは地味。 --  &new{2009-06-16 (火) 22:09:40};
- 付加します。ある時点で正道に立ち戻り、己の過ちを認め悔い改めたイシルドゥアやボロミアと比較して、このエルフはやはり人格的に「小さい」と思います。最期まで己の過ちを理と利では知りながら、感情では認めずエルフ共同体を破滅に突き進ませる死の間際の行いなど、万死に値します。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-16 (火) 22:13:45};
- 先の見えた安定だけが人を幸せにするわけではありますまい。フェアノールが扇動せずとも、既に知性も理性も備わったフィンナルフィンの子供たちの間にすら、「自由」への憧憬は抑えがたく育っていたわけですから、ノルドールの離反は、決してモルゴスの謀略やフェアノールの人格のみに責任を帰するべきものではないのです。だからこそ、マンウェも最後はノルドールを引き止めなかったし、フェアノールが最後に放った「我らは敗北するとも、我らの功業は歌に歌われることになるだろう」という言葉に真実を見出して落涙するわけです。このフェアノールの言葉は後にトゥーリンによってナルゴスロンド陥落の前夜にも繰り返されるわけですが、教授は決してこれを単なる傲慢さの象徴として描いているわけではないと思いますよ。神の愛の下に暮らすことと、自由を追い求めることとの二律背反の悩みは、人類の永遠のテーマの一つなのですし。 --  &new{2009-06-17 (水) 02:13:10};
- あと、もう一点彼が弁護されるべき点として、ヴァラールがエルダールの庇護を宣言していながら、モルゴスの悪行に対してこれを見過ごしたという決定的な落ち度があることを忘れてはいけないと思います。絶対的庇護者としてのヴァラールの威光は、この時点で既にフェアノールの中では崩壊しており、そんな彼の立場でヴァラールの言葉を「正道」であるとはどうしたって認め得ないのが普通だと思いますよ。これもまた、あくまでも「先輩」であり「庇護者」ではない、というマンウェの心と他のヴァラールのスタンス(および、それに同調するエルダールの崇拝)とが微妙に異なっていたがための悲劇なのでしょうが。 --  &new{2009-06-17 (水) 02:25:05};
- ↑ マンウェに呼び出されている間の父の死は最悪のタイミングでしたね。モルゴスの狡知の成せる業と言うか...とはいえ、ヘルカラクセでの所業は正気の沙汰とは思えない。テレリとの交渉決裂、同族殺害、マンドスの宣告と、本人も気がつかないうちに徐々に精神的に追い詰められていたのかも知れません。 --  &new{2009-06-17 (水) 03:25:36};
- ↑↑見過ごしたのではなく、ヴァラールが軍を調えるために時間が必要だったのでは? それもフェアノールの同族殺害で沙汰止みになったように見えますが。 自分は、この人物は項羽そっくりに見えます。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-17 (水) 13:09:24};
- メルコールの偽りの改悛を見抜けなかった、というのはやはりヴァラールの決定的な落ち度であるように思えますね。フェアノールがあそこまで過酷になったのは、確かに彼に本来そなわっていた性分もあるでしょうが、それを邪な方向へ捻じ曲げて増長させたメルコールの所業も無視できないように思えます。問題があったのは事実ですが、同時に偉大でもあったのは間違いないように思えます。要するに振り幅が極端に大きい人であったのだと。 -- よよ &new{2009-06-17 (水) 19:11:11};
- ↑ 落ち度といっても、たしかシルマリルリオンにはヴァラールは善のみの存在であるため、邪なたくらみを見抜けなかったとあったように思います。要するにヴァラールであるがゆえに見抜けなかったと。それ以外の部分については概ね同意。 --  &new{2009-06-17 (水) 23:22:20};
- シルマリルの引渡しを求めたトゥルカスの言葉なんかも、破綻の引き金を引いてましたねぇ。マンウェ自身は決して「善導者」として何かを強制するようなことはないのですが、あまりに正論すぎたトゥルカスの言葉は、フェアノールの自由意志を奪い、盲目的に彼らの言葉に服従するしかない、という空気を作ってしまいましたから。アウレ達がその短慮をいさめたとはいえ、一連の会話を聞いていたエルダール達の間で、トゥルカスの言葉が間違っているなどと思う者はいなかったでしょう。 --  &new{2009-06-18 (木) 00:21:11};
- トゥルカスにはシルマリルを喪えば自分の心は壊れるだろうと訴えたのに、同じくらいテレリ族が大事にしていた船を略奪するという行為に対してどう思っていたんでしょうね。この想像力の欠如も、自分がこの人物の評価を著しく下げている理由です。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-18 (木) 00:31:05};
- 船は借りるだけでもいい、という話だったんですがね。シルマリルと違ってそれによって永遠に失われるわけではないですし(再び中つ国から船を戻せる可能性がほぼ無いというのも事実ですが)。オルウェがフェアノールの申し出を拒んだのは、彼もまたヴァラールの言を絶対の正義と感じていたがためという部分が大きく、それ故に、彼自身の心が真にノルドールへの友情で満ちていたにも関わらず、彼の言はフェアノールにとって単なる妨害行為としてしか映らなかった、と。まぁ、既にこの辺りでフェアノールの心は狂気の世界に片足突っ込んでますからなぁ…… --  &new{2009-06-18 (木) 02:38:31};
- でも焼いちゃいましたよね、テレリ族の船。しかもかなりの数の同族(ノルドール)置き去りにして。だいたいテレリ族をシルマリル奪還の旅に誘ったのは、「アマンの地に残る同胞に少しでも優れた物を残していかないようにするため」ですからね。情状酌量の余地無し。彼は最低の男です。 -- 「ど」の字 &new{2009-06-18 (木) 22:02:05};
- 情状酌量の余地のない最低な男とまで言いますか。まぁ、実際、彼の行動にはそう断罪されて然るべき点が多々あることは誰も否定しようのない事実ですが。ただ、そもそも、アマンに残ることは「正しいこと」だったのか、という部分から客観的に考えていかないと、フェアノールという男の真価は測れないのではないでしょうか。彼の存在は、ヴァラですらも、イルーヴァタールの作り出した世界の多様な一面に過ぎない、という物語のテーマの一つを生み出すに至るものでした。アマンの幸福を否定し、あまつさえ間接的な敵対行動(テレリ族の引き抜き)にまで至る彼の行為は、一面において、モルゴスへ自らの手で一矢報いたいという彼の自由意志を否定し、それに同調する彼の親族達を引きとめようとしたヴァラールの行動の裏返しと解釈することもできるのではないでしょうか。その両者の対立が生んだ同族殺しの悲劇は、フェアノール個人の狂気のみに(もちろん、それが主たる要因であるとはいえ)帰してよいものかどうか、と考えますが。 --  &new{2009-06-19 (金) 06:56:41};
フェアノールと[[その息子たち>フェアノールの息子たち]]の家系はフェアノール王家と呼ばれた。本来は[[ノルドール]]の[[上級王]]位の継承権も[[フィンウェ]]の長子であるフェアノールの家系に属していたが、フェアノールの死後、その長男である[[マエズロス]]が[[フィンゴルフィン]]の長男で従兄弟である[[フィンゴン]]に救出されて[[サンゴロドリム]]から生還した際、[[アラマン]]での裏切りの謝罪として王位継承権を放棄して[[フィンゴルフィンの家系>フィンゴルフィン#House]]へと譲渡した。
これによってフェアノールの家系は[[マンドスの宣告>マンドスの呪い]]に予告された通り「奪われたる者たち(the Dispossessed)」と呼ばれるようになった。これはノルドールの王権と[[シルマリル]]を二つながら喪失したことによるという。

#comment
[[フェアノールの息子たち]]はいずれもフェアノールの誓言の呪縛によって、再三の[[同族殺害]]を犯した末に非業の死を遂げた。五男[[クルフィン]]の息子でフェアノールの孫にあたる[[ケレブリンボール]]のみが[[第二紀]]まで生き延びて[[エレギオン]]を築き、父や祖父と同様名工として名を馳せた。
だがケレブリンボールは、アンナタールと名乗って近づいてきた[[サウロン]]に誑かされて[[力の指輪]]を制作し、後にサウロンの正体と思惑に気づくと彼に抵抗したが、捕らえられて拷問にかけられた末に死亡した。これによって[[中つ国]]におけるフェアノールの家系は途絶えた。((『[[The History of Middle-earth]]』によると、フェアノールの次男[[マグロール]]と四男[[カランシル]]は結婚していたとされるため、[[アマン]]においてか、もしくは女系ではフェアノールの血統は残されている可能性もある。))

『[[指輪物語]]』作中で[[指輪の仲間]]が目にした[[モリアの西門>モリアの壁]]には、[[ケレブリンボール]]が描いた[[イシルディン]]の文様の中央に[[フェアノール王家の星]]の紋章があった。

*** 多数の名の意味 [#c9d079dc]

以下の名前及びその説明は『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』「The Shibboleth of Fëanor」による。

:クルフィンウェ(Curufinwë)|父[[フィンウェ]]が与えた[[父名>エッシ]]。初めは父と同じ「フィンウェ」だったが、その優れた技能にちなんで[[クウェンヤ]]で技(skill)の意味の"curu"の語が加えられた。後にフェアノールは息子の[[クルフィン]]にこの名を与えた。
:フェアナーロ(Fëanáro)|母[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]が与えた[[母名>エッシ]]。[[クウェンヤ]]で「火の精(Spirit of Fire)」の意味。
:フェアノール(Fëanor)|伝承で最もよく知られる名。フェアナーロとその[[シンダリン]]形ファイノール(Faenor)が混ざったものと思われる。

** コメント [#Comment]

#pcomment(,,,,,,reply)