闇 の森 †
概要†
カテゴリー | 地名 |
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スペル | Mirkwood |
その他の呼び名 | エリン・ガレン(Eryn Galen) タウア=エ=ンダイデロス(Taur-e-Ndaedelos) エリン・ラスガレン(Eryn Lasgalen) タウル=ヌ=フイン(Taur-nu-Fuin)*1 |
解説†
リョヴァニオン北部、アンドゥインの東に広がる大森林。
かつてここは緑森大森林と呼ばれる非常に古い森林であったが、第三紀に死人占い師の影響によって影が落ち、恐ろしく危険な場所に変わってしまったことで闇の森と呼ばれるようになった。
森の北東部のはずれにはエルフの森の王国があり、西の外れは森人やビヨルン一党が住んでいる。
明るくなったばかりのころ、ゆくてにあたって、黒々としたいかめしい城壁のような森が、待っていたぞというかのように立ちあらわれました。大地はしだいにゆるくのぼりはじめ、ホビットにとっては、無言のいかめしさが、一同の上にかぶさりはじめたような気がしました。鳥は、はたとうたわなくなりました。シカはいず、ウサギさえも見かけません。ひるすぎになって、やみの森の外がわにたどりつき、そそり立つ木々の張りだした枝の下にすわって、一休みしました。それらの幹はまことに大きく、こぶこぶだらけで、枝はねじくれ、葉は黒くてだらりとしています。ツタカズラが木々の上にまつわって、地上にさがっています。
「さて、ここが、やみの森じゃ!」と、ガンダルフがいいました。「北のくにの森のうちでは、いちばんに大きな森じゃ。」*2
木々の密集した森の中は重苦しい暗闇に覆われており、得体の知れない様々な生物の気配で満ち、巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされている。陽が落ちると鼻先にかざした自分の手すら見えないほどの真の暗闇となり、蛾の大群をはじめとした夜の生物を呼び寄せるために火を焚くことすらままならない。
食糧になるものもほとんどなく、森の動物は肉まで黒くとても食べられたものではなかった。北部の中ほどには魔の川が流れているが、この川の水は飲んだり浴びたりすると眠気に襲われて物事を忘れてしまうため、飲用には適さない。
ひとたび道を外れでもすれば生きて帰れる望みはないが、かつて使われていた森を東西に横切る古森街道は荒れ果てて使えなくなっており、それとは別に北にはエルフ道があるが、そこすら安全ではなかった。しかし北東部の森の王国の近くでは、暗闇と危険はいくらか鳴りを潜める。
登場する地名†
歴史†
かつてこの森林はシンダリンでエリン・ガレンすなわち「緑森(Greenwood)」と呼ばれていた。
星々の時代にエルフがアマンへ向けて大いなる旅をしていた時、既にここには森が広がっており、霧ふり山脈に阻まれて足を止めたテレリの一部はこれらアンドゥインの谷間の森一帯に広がり、シルヴァン・エルフと呼ばれるまばらな民となった。第二紀以後、緑森大森林にはシンダールの公子達によって統治されるようになったシルヴァン・エルフの王国があった(詳細は森の王国の歴史を参照)。
しかし第三紀1050年頃から緑森に影が兆すようになり、1100年には森の南端アモン・ランクに死人占い師の拠点ドル・グルドゥルが設けられていることが判明する。死人占い師の投げかける恐怖の影は断続的に森に広がっていき、やがてエルフがいる地域以外は、巨大な蜘蛛(シーロブの末裔)をはじめとした邪悪なものが徘徊し、昼でも太陽の光がほとんど差さず、川の水すら真っ黒な恐ろしい場所となってしまった。このため森林はシンダリンで「大いなる恐怖の森(Forest of the Great Fear)」の意であるタウア=エ=ンダイデロス、共通語で「闇の森」の名で呼ばれるようになる。
当時、森の周辺には北方の自由の民が住み着きつつあり、東側の早瀬川流域では北国人による長年の伐採で東入地が形成されるなどしていたが、やがて東夷との相次ぐ戦乱と広がる死人占い師の影のために、人間の勢力も次第に北へと追いやられていった。
第三紀末(2941年頃)にはほとんど全体が暗闇に覆われており、森を東西に抜ける古森街道も荒廃して使用不能になっていた。エレボール遠征の途上、ソーリン二世率いる13人のドワーフとビルボ・バギンズの一行は闇の森を通過するためエルフ道を使用したが、森の中で催されていたエルフの宴に引き寄せられて道を外れてしまい、蜘蛛に襲われた。その後さまよっていたところ、森の王国のエルフ王の岩屋に捕らえられた(『ホビットの冒険』)。
同年、白の会議の攻撃によって死人占い師はドル・グルドゥルの要塞を捨てて逃亡し、森も健やかな場所に戻ると思われた。
だが2951年、彼はモルドールでサウロンとして公然と名乗りを上げ、逃亡は見せかけであったことが明らかとなる。サウロンはナズグールを派遣してドル・グルドゥルを再占領し、そのため闇の森は依然として忌まわしい場所であり続けた。
指輪戦争によってドル・グルドゥルが完全に破壊されたことで、ようやく闇の森の影は取り除かれた。
3019年(大いなる年)4月6日に森の中央で会見したスランドゥイルとケレボルンにより、闇の森は「緑葉の森(Wood of Greenleaves)」を意味するエリン・ラスガレンと改名される。闇の森山脈より北はスランドゥイルの領土に、狭隘部より南は東ローリエンとしてケレボルンの領土に、その間はビヨルン一党と森人の土地として分割された。
エリン・ラスガレンには第四紀に入っても、シルヴァン・エルフたちが落ち着いて暮らしていたという。
画像†
トールキンが描いた闇の森の絵はアレン・アンド・アンウィン社の『The Hobbit』初版第一刷に収録された。『終わらざりし物語』においてクリストファ・トールキンは、闇の森のエルフ語名がタウル=ヌ=フインであるという記述に関して、闇の森の絵とベレリアンドのタウル=ヌ=フインの絵との類似を指摘している。
森の王国 (Woodland Realm)†
闇の森の北部にあるシルヴァン・エルフの王国。王はスランドゥイル。指輪の仲間の一人レゴラスの出身地。ここには、宮殿である岩屋がある。
「森の王国」の名称は『二つの塔』で一度だけ使われるもので、作中では森エルフの王国(Wood-elves' realm)やスランドゥイルの王国(realm of Thranduil, Thranduil's realm)、あるいは単に「闇の森」と言及されることが多い。
あの魔の川から四日たったころ、一同は、ほとんどブナの木ばかりしげっている場所にでました。はじめのうちは、このかわり方に声をたててよろこびました。それは、びっしり茂る下草がなく、くらがりがひどくなかったからで、あたりには緑色のほの明るさがただよい、道の両がわがかなり遠くまで見とおせるところが、ほうぼうにありました。明るいといっても、とほうもなく大きなたそがれの広間のなかに立ちならぶ柱の列のように、黒っぽい幹が限りなく列をつくっているのが見えるだけです。でも空気には動きがあり、風の音もします。もっともそれはかなしげな音でした。木の葉がひらひらまいおちてきて、森のそとには秋が来ていることを思い知らせました。いままでのかぞえきれない秋ごとに、森の中に落ちてはつもったかぎりない落葉が、ぶあつく赤いじゅうたんとなっていますが、ふきよせられて道の上にもふかくつもったその落葉を、一同はかさかさけちらして歩きました。*3
闇の森のエルフは地上や木の上に家や小屋を建てて住み(特に橅を好んだ)*4、森で狩りをしたり、東の土地で仕事をして生活していた。金属や宝石の採掘や加工は行わず、耕作や商売もあまり熱心ではなかった。
エスガロスの湖の人とは交易を行っていた*5。たての湖(沼地)の拡大でエルフ道などの森の外の土地へ通じる道が使えなくなってからは、森の川だけが唯一の安全な交易路兼移動路となった。森の王国は森の川を管理下に置き、エスガロスから川の通行料を徴収していたので、そのことで両者が揉めることもあったが、エスガロスの町がスマウグの襲撃で潰滅したことを知るといち早く救援に赴くなど、基本的には良好な関係を築いていた。
闇の森のエルフ†
王国の民の大部分はシルヴァン・エルフ(森のエルフ)である。
スランドゥイルやレゴラスなど統治者層の出自はシンダールであったが、かれらは森エルフの素朴な暮らしに馴染むことを望み、シルヴァン風の名前と習慣を取り入れていたという。
そのため闇の森のエルフは、シンダールおよびノルドールの影響をより積極的に受け入れたロスローリエンのエルフ(ガラズリム)と較べて粗野であり、技量も低かった。
歴史†
荒地のくにで、むかしからずっと森エルフたちは、日ののぼる前と月ののぼる前のたそがれのなかにくらしてきました。そしてのちに、日のかげになる森の中にさまよいこんだのです。このエルフたちのいちばん好きなところは、森のはずれで、そこですと、時には狩をしたり、月あかり星あかりの草地を走りまわることもできました。人間がやってきてからは、まえよりますます多く、うす暗がりとたそがれにかくれ住むようになりました。*6
もともと緑森大森林をはじめとしたアンドゥインの谷間の一帯には、ナンドールから分かれたシルヴァン・エルフが定住していた。
『終わらざりし物語』によると第二紀以降、リョヴァニオンのシルヴァン・エルフはベレリアンド崩壊を逃れてきたシンダールの公子達を統治者として受け入れた。そうした公子の一人オロフェルは、アンドゥイン以東のシルヴァン・エルフを治める王となった。
当初オロフェルは闇の森の南西部、ロスローリエンの対岸にあるアモン・ランク(後のドル・グルドゥル)の近くに住んでいたが、サウロン勃興の噂におののいて三度北に移住し、第二紀末にはエミン・ドゥイア(後の闇の森山脈)の西部の谷間に住み*7、彼の民もドワーフ道(後の古森街道)より北にある森や谷間に住んだ。
かれらは最後の同盟に参加してサウロンを敵として戦ったが、独立心が強くギル=ガラドの最高指揮権を認めなかったことと、装備が軽装であったことから、必要以上の損害を蒙り、大軍であったにも関わらず森へ帰還した時にはその数はもとの三分の一にまで減少していたという*8。
オロフェルが最後の同盟の戦いで戦死したため、その息子のスランドゥイルが第三紀を通じての王であった。
森のエルフの数は再び増え始めたが、第三紀の中つ国は着実に人間の世界へ変化していき、エルフはそれを感じ取って不安に満たされるようになった。森の周囲に北方の自由の民や東夷などの人間が増え、ドル・グルドゥルの闇の勢力が拡大するに伴い、エルフは森の北東部へ後退していき、スランドゥイルは森の端に近い場所に宮殿である岩屋を築いた。
第三紀2941年には王国内に侵入したソーリン二世と彼の仲間たちを虜囚にするも、ビルボ・バギンズの機転で脱獄を許してしまう。その後、事態を注視していたスランドゥイルはスマウグ死亡の報を聞いてはなれ山に向けて出陣するが、まずは破壊されたエスガロスへの援助を優先し、町の再建の目途が立つとバルド率いる湖の人の軍勢と共にはなれ山へ向かった。五軍の合戦で森の王国のエルフは三軍の一員として戦い、犠牲を出しつつも勝利した。
第三紀3018年から3019年の指輪戦争では、森の王国はドル・グルドゥルから攻撃を受け、火によって森林に大きな被害が出たが、最後には攻撃を撃退した(闇の森樹下の合戦)。指輪戦争が終結するとスランドゥイルは闇の森の真ん中でケレボルンと会見し、闇の森をエリン・ラスガレンに改名するとともに、闇の森山脈以北の森を自らの王国とした。
第四紀になると、一部のエルフはレゴラスに率いられてイシリエンへ移住し、その地を美しく豊かにしたが、大部分の森のエルフはエリン・ラスガレンで落ち着いて暮らしたようである。
映画『ホビット』における設定†
原作の通り、ビルボ・バギンズとソーリンら13人のドワーフがエルフ道を外れて闇の森で迷う描写はあるものの、森の中で宴会をしているエルフたちの元に行こうとするがたどり着けない場面など、民話的な雰囲気の描写はカットされ、代わりに蜘蛛に襲われたソーリンの一行が、蜘蛛狩りをしていたエルフの警備隊に捕らえられるという、アクションを重視した描写に変更されている。
また、原作『ホビットの冒険』では存在が言及されていないレゴラスや、映画オリジナルキャラクターのタウリエルが森の王国のエルフとして登場する。
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ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
2015年に南部のみ実装。その後2018年に、指輪戦争終結後の北部闇の森としてエリン・ラスガレンが実装。
南部にはドル・グルドゥルがあり、その西部にはドル・グルドゥルを監視・偵察するための、ロスローリエンのエルフによる拠点が複数存在する。
かつて人間が住んでいたが、廃墟となって亡霊の巣窟となっている場所もある。
北部は指輪戦争終結後となっているが、まだ闇の影響は残っており蜘蛛などがいる危険な場所が残る、薄暗い森林となっている。地域には森の王国やエルフ王の岩屋のほか、森の外のエレボール、湖の町、谷間の国が含まれる。
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