紋章†
概要†
カテゴリー | 書籍・資料等 |
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スペル | Heraldic Devices |
解説†
このページではジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンが1960年代初めに描いたエルフ及び人間の紋章について掲載する。
トールキンはこれらの紋章について以下のルールを示している。
Women within a circle personal
Men within a lozenge
general (impersonal) designs or
emblems of a family square
(or [?] once, circular).
The rank was usually held to be
shown by number of ‘points’ which
reached the outer rim
four was prince, 6-8 kings
the great ancestors
sometimes had as many [as] 16 as in
House of Finwë.
すなわち以下のようになる。
- 個人の紋章は女性が円、男性が菱形の中に収められる。個人用ではない一般的なものや家系の紋章は四角形(かつては円形か)。
- 紋章の格は通常、外縁に接する点(ポイント)の数で表される。公子は4個、王は6から8個、偉大な祖先では時にフィンウェ王家のように16個もの数になる。
フィンウェ王家、フィンウェ、エルウェ†
フィンウェ王家及び、エルウェ(シンゴル)個人の紋章。
フィンウェ王家の紋章の説明は「翼ある太陽 フィンウェ王家 上級王たちに伝わる フィンゴルフィン フィンゴン トゥルゴン。フィナルフィンの子孫は青い星を用いた」*1。フィンウェ王家(House of Finwe)がフィンロド王家(House of Finrod)に改められているが理由は不明。太陽は十六分割され、十六枚の翼を持ち、ポイントは16個。
エルウェの紋章の説明は「翼ある月 黒の上に星々と エルウェ」*2。月は八分割され、八枚の翼を持ち、ポイントは8個(明らかにフィンウェより格下である)。背景の黒地には五角星が計四個ある。
トールキンはフィンウェ王家の紋章とよく似たデザインの、フィンウェ個人の紋章も描いている。
フェアノール、フィンゴルフィン、フィナルフィン†
フィンウェの三人の息子の紋章。
長男フェアノールの紋章。中央にあるのは恐らく彼が作り出したシルマリルで、それを囲む円と、菱形の外縁に内接する円がある。四つの炎と、八つの光線が内接円に、四つの炎が外縁に接する。揺らめく炎は「火の精」を意味する彼の名と、その激しい気性の象徴か。炎だけを見ればポイントは8個だが、内接円に接する八つの光線を補助的なポイントに含めることが出来るかもしれない。
次男フィンゴルフィンの紋章の説明は「フィンゴルフィンと彼の家系」*3。フェアノールと同様に二重に円が置かれ、揺らめく炎が内側の円と外縁にそれぞれ八つ接する。ポイントは8個か。
背景の青地には銀の五角星が計四個ある。彼の青と銀の旗に関連があるのかもしれない。*4
三男フィナルフィンの紋章の説明は「フィナルフィンと彼の家系 特にフィンロド」*5。二人の兄と異なり、揺らめく炎がなく、内部にある円も一つのみ。二人の兄よりも穏やかな彼の気性を表現したものか。ポイントは8個。
メリアン†
マイエであるメリアンの紋章。他のエルフの紋章と異なり、文様が多層的。四方への伸び、四角形の構図は娘のルーシエンの紋章にも見られる。
ベレグがメリアンから賜ったレンバスを包む葉は、テルペリオンの花を模した彼女の封蝋で封じられていたとされ*6、この紋章も同様にテルペリオンの花を模したものなのかもしれない。
ルーシエン†
ルーシエンの紋章は花をモチーフとした二種類があり、どちらもフェアノール文字でルーシエン・ティヌーヴィエル(Lúthien Tinúviel)と題されている。描かれている白い花はルーシエンが生まれた時に咲いたとされるニフレディルと思われる。
片方の紋章には中央に黄色い花が置かれており、これはエラノールなのかもしれない*7。この紋章の背景はルーシエンの父エルウェの紋章と同様に黒で、五角星が計四個ある。
イドリル†
フェアノール文字でMenelluin Írildeo Ondolindelloすなわちクウェンヤで「ゴンドリンのイドリルの矢車菊(Cornflower of Idril from Gondlin)」*8と題されたイラスト(日付は1960年12月14日)。矢車菊をモチーフにしたイドリルの紋章で、ポイントは6個あるいは12個か。
説明には「ゴンドリンから守り通され、エアレンディルからヌーメノールへ伝わり、そこからエレンディルによって救われ、ゴンドールに持ち込まれた象嵌の記念盾」*9、「イドリルの紋章。"矢車菊"の文様メネルルイン。(大抵は品位の落ちた)ヌーメノールの円形文様の起源」*10とあり、ヌーメノールではこの文様がよく模倣されたことが示されている。
エアレンディル、ギル=ガラド†
1960年12月13日付けのトールキン宛の封筒に描かれたもの。
封筒の左上に描かれているのはエアレンディルの紋章。紋章の中央はエアレンディルの星(エアレンディルの帯びるシルマリル)、四隅にあるのは月の月相と思われる。中央の星は六方向に光線を伸ばして内接円に接し、内接円からは逆に中央に向けて伸びた六つの線が内側の円に接する。
他の二つの紋章はギル=ガラドのもの。「輝きの星」を意味する名の通り、青い背景に星をちりばめたデザイン。ギル=ガラドの名が添えられた右の方が完成度は高く、構図がより対称である。
『終わらざりし物語』の「アルダリオンとエレンディス」では、タル=メネルドゥルが受け取ったギル=ガラドの親書に同様の特徴を持つ紋章*11が付されていたとある。
ベレン、フィンロド†
ベレンの紋章はサンゴロドリムの三つの峰、一個のシルマリル、片手が描かれている。
説明には「ベレン・ガムロスト、歴史的記念盾」*12とあり、シルマリル探索において片手を失ったベレンの勲を顕彰するものと思われる。
フィンロドの紋章は他のエルフと異なり、文様ではなく竪琴と松明の図像。『Pictures by J.R.R. Tolkien』では、フィンロドがベオルの族と遭遇した出来事を記念するものと推測されている。
ベオル、ハドル、ハレス家†
シルマリル†
木を背景に三個のシルマリルが描かれたもの。これを含め、フェアノール、ベレンの紋章でもシルマリルは八分割されている。
コメント†
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