死人しびとうらな

概要

カテゴリー人名
スペルNecromancer
異訳死霊術士、死人遣い、ネクロマンサー、黒魔術師
その他の呼び名妖術師(Sorcerer)、きたない魔法使い(black sorcerer)

解説

闇の森の南部にあるドル・グルドゥルを居城とした妖術師。復活したサウロンが正体を隠していた時の呼び名。

第三紀1100年頃より現れ、その存在によって影の落ちた緑森大森林は次第に怪物や危険に満ちた地へと変わっていき、闇の森と呼ばれるようになった。
死人占い師は闇の勢力を集め、妖術を執り行って広く恐れられた。彼が投げかける恐怖の影はホビット族のエリアドール移住やエーオセーオドの北方移住などに影響を及ぼしている。

賢者達は当初、死人占い師をナズグールの一人だと考えていた。
だがガンダルフはその正体がサウロンではないかと早くから警戒し、2063年には最初のドル・グルドゥル潜入を行った。まだ完全に力の回復していなかった死人占い師は正体の露呈を恐れて逃亡し、それからしばらく警戒的平和がもたらされた。
しかし死人占い師は2460年には力を増してドル・グルドゥルに戻り、警戒的平和が終わる。ガンダルフは2850年に再びドル・グルドゥル潜入を決行し、死人占い師の正体が間違いなくサウロンであることを突き止めた。

サウロンはドル・グルドゥルを拠点にして力の指輪の収集や一つの指輪の捜索を行い、また密かにナズグールをはじめとした闇の勢力や様々な手段を使って自由の民への攻撃を行っていた。
2841年には、はなれ山を目指し旅に出たスラーイン二世を妨害し、ドル・グルドゥルにおびき寄せて幽閉、七つの指輪の最後の一つを奪うなどしている。またガンダルフはサウロンがここからロスローリエン裂け谷への攻撃を計画し、それにスマウグを利用するつもりなのではないかと危惧していた。

2941年(五軍の合戦があった年)、ガンダルフの説得に応じた白の会議はドル・グルドゥルを攻撃し、死人占い師は要塞を放棄して逃亡した(『ホビットの冒険』)。
これによって北方を狙ったサウロンの当初の計画は実現しなかったが、すでにサウロンはナズグールを通じてモルドール帰還の準備を進めており、逃亡は見せかけのものだった。彼はそのままモルドールに入ると、2951年にサウロンとして公然と名乗りを上げる。同年、彼は三人のナズグールを派遣してドル・グルドゥルを再占拠した(『指輪物語』)。

名前について

英語のnecromancerとはnecro-「死者」+-mancy「予言、占い」からなる言葉で、一般的に死者の霊を呼び出して未来等を占う呪術者(交霊術師)を指し、転じて魔法使いや黒魔術師全般を指しても使われた語である。訳名の死人占い師ホビットの冒険では死人のたましいをよびおこす占い師とも訳されている)はその語義を参照して選択された語と思われる。

トールキンがどのような内容を念頭においてこの語を用いたのか本編の記述からは明確ではないが、『指輪物語』でサウロン幽鬼物言わぬ番人をはじめ霊的存在を配下に従えていることが言及されており、『シルマリルの物語』では第一紀のサウロンは亡霊と妖怪の支配者(master of shadows and of phantoms)*1と述べられ、巨狼吸血蝙蝠のような悪霊の宿った怪物を従えていたことや、ゴルリムを謀る時に死んだエイリネルの姿を幻影(phantom)として見せたことなどが言及されている。
さらに『Morgoth's Ring』では明確に、サウロンはマンドスの召喚を拒んだエルフの悪霊を配下にして他者の肉体を奪う技などを仕込んでいたとされている。
ナズグールの首領であり妖術師である魔王もまた、塚人をはじめとした悪霊を呼び起こすことができた。

こうした点から、トールキンの用法におけるnecromancerには霊魂を使役する者との意味が含まれていることは確かなようである。

備考

トールキンが『ホビットの冒険』を書いた当初、死人占い師の正体は明確に決めていなかった。やがてその続編を執筆中、姿の見えなくなる指輪死人占い師との結びつきを思いつき、『指輪物語』として書き進められた結果、現在のような設定が作られた。

「指輪。もともとどこから来たのか? 死人占い師か? よき目的に使われればそれほど危険ではない。しかし罰が必要だ。持主は指輪をなくすか、自分を・・・失うか」*2

映画『ホビット』における設定

俳優ベネディクト・カンバーバッチ
日本語吹き替え吹き替えなし

翻訳ではネクロマンサー、死人使いなどとされている。
ソーリンの一行エレボールへ旅をしていた頃、ラダガストによって存在が知られる。
ラダガストがドル・グルドゥルの廃墟でモルグルの刃を発見したことから、白の会議アングマールの魔王ではないかと疑うが、特にサルマンはその存在そのものに懐疑的だった。

『竜に奪われた王国』にて、ガラドリエルの警告を聞いたガンダルフ*3リュダウルにある魔王の塚が空になっているのを確認した後、直接死人占い師の正体を確かめるためドル・グルドゥルに向かう。その結果、正体がサウロンであることを知る。
『決戦のゆくえ』で、ガラドリエルによってドル・グルドゥルから撃退され、東へ去った。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • サウロンはマンドスの召喚を拒んだエルフの悪霊を配下にして他者の肉体を奪う技などを仕込んでいたとされている←ケルブリンボールは自主的にコレをやってる訳だ -- 2020-01-24 (金) 05:55:12
  • ロードオブザリングのモルゴス擬きの姿以前の指輪戦争の頃のサウロンのイメージってここら辺のネクロマンサーみたいな銀河皇帝パルパティーンみたいな -- 2020-04-27 (月) 15:11:46
  • ホビット2でガンダルフが死人占い師との魔力対決でサウロンの姿を見破ったのは良かった。あれのおかげで、LotRで指輪に触れかけたりパランティアに触れた時に“大いなる目”を幻視した事に重みが増すし。 -- 2020-07-24 (金) 14:53:32
    • ガンダルフが見破ったんじゃなくてサウロンの方から正体を現したんじゃないか? -- 2020-07-24 (金) 15:04:41
      • 言われてみればそうだったかな。死人占い師状態では決着がつかないとサウロンは思ったから本性を顕したように見えたんで、なんか「ガンダルフが見破った」って解釈してた。 -- 2020-07-24 (金) 15:36:23
  • 俺の占いが....やっと外れる....(指輪棄却) -- 2022-01-23 (日) 23:41:25
    • タイムベントで第二紀まで時間巻き戻せばいいじゃん -- 2023-01-28 (土) 10:38:54
  • 死霊を使役する以外に、サウロン自身が死人の身体に憑依して行動した事はあったのかどうか -- 2023-08-30 (水) 14:28:18
    • 無いんじゃないですか?サウロンにとってはリスクしかないムーブですしそれ。もちろんそれくらい出来てもおかしくはないと思いますけど。
      特にそれをするメリットが考えつかないので。
      死した権力者を装うといってもそれっぽい史実もないですし、自分が出張らなくても魔王が北方王国滅ぼしたり、ミナス・イシル陥落させたり色々やってくれてますしね。 -- 2023-08-30 (水) 15:26:17
    • 指輪を取られた直後にその場しのぎの逃走手段で使ってたり -- 2023-08-30 (水) 15:39:01
    • 「出来るけどそんなことはやらない」
      に尽きるのでは。サウロン自らがそれをしなければならない状況が思いつかないし、サウロンは必要と思ったこと以外はやらないタイプでしょう。 -- 2023-09-03 (日) 04:47:12
  • Dr.ストレンジ二作目の終盤、「カンバーバッチがまた死人占い師やってる......」と思ったものだ -- 2023-12-18 (月) 13:05:36
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