木 の鬚 †
概要†
解説†
ファンゴルンの森に住むエントの最長老。シンダリンではファンゴルンと呼ばれ、木の鬚はその共通語名。古代エント語における彼の本名は、彼の来歴をそのまま物語るものであるため非常に長大であり、また軽々しく他人に明かされることもない。始源に生まれた者と呼ばれ、中つ国の生命の中で最も最初に現れた者に入る。
第一紀以前にはベレリアンドに足を運び、タサリナン、オッシリアンド、ネルドレス、ドルソニオンの地を歩いていたという。
まるでとても低い木管楽器の音のような低い太いブンブン声で話す。エントの例にもれず温厚かつ極めて慎重な性格をしており、熟慮した上でなければ大きな行動に出ようとはしないが、いざ行動に出れば素早く疲れを知らない。
「もう少しでこの森が好きになるところだったとな! そりゃけっこう! なみなみならぬご厚意よ。」不思議な声がいいました。「こっちを向いて、顔を見せてくれぬか。わしはもう少しでお前さん方のことを嫌いになりかけておった。だがお互いに早まるまい。こっちをお向き!」
… 二人が見たのはまこと世にも珍しい顔でした。その顔の持ち主は、トロルといってもいいような、大きな人間のような姿をした者でした。背の高さは少なくとも十四フィートはありましょう。頭部は長頭で、頸はないも同然の猪首で、非常にたくましい体つきでした。体にまとうものは、緑がかった黒ずんだ木の皮の類か、この者の地肌なのか、どっちとも判じかねました。ともかく両の腕は胴からさほど離れていないところでは、皺も寄らず、滑らかな茶色の皮膚で被われていました。大きな足には指が七本ずつありました。長い顔の下半分は引きずるような灰色の顎鬚で覆われていて、そのもじゃもじゃ鬚は根本はほとんど小枝のよう、先端は細くなって苔のようでした。しかしその時、ホビットたちは、目のほかにはほとんど注意をはらっていませんでした。*1
指輪戦争における木の鬚†
「まるでその目の後ろにはとてつもなく大きな井戸があってね、そこには大昔からの記憶と悠長で不動の考えがいっぱいつまってるって、感じなんだ。だけどその表面には現在がきらめいている。ちょうど大きな木の外側の葉っぱに日の光がきらきらと当たるように、深い深い湖の漣立つ面に日の光がきらめくようにね。」*2
木の鬚は、オークから逃げ出して偶然ファンゴルンの森に迷い込んだペレグリン・トゥックとメリアドク・ブランディバックを保護し、彼らの友人となる。
見慣れぬホビットに興味を抱いた木の鬚は、二人を自らのエント小屋に招いてエント水を振る舞い、話を聞くうちに、隣人であったサルマンが悪に転じたことを確信する。これ以上の森への損害を食い止めるため、木の鬚はエントの寄合を招集してサルマンと戦うことを決議。奮起したエントとフオルンの大群を率いてアイゼンガルドへ進撃した。
同時に木の鬚は、ガンダルフの求めに応え、角笛城の合戦に援軍としてフオルンの群を差し向けている。
エントはアイゼンガルドの要塞を破壊したが、オルサンクの塔を傷つけることはできず、そこに逃げ込んだサルマンを捕らえることができなかった。戦いにおいて木の鬚は激昂したエント達がサルマンの罠にかかったり逆上したりして無用な傷を負わないよう、彼らを鎮めることに務めた。
木の鬚とエント達はアイゼン川を決壊させて水をアイゼンガルドに引き入れ、要塞を水没させてサルマンをオルサンクに閉じ込める。そして、ガンダルフやセーオデンらによる談判が終わった後、サルマンの監視を引き受けた。
しかしサウロンが滅びると、生き物を幽閉しておくことを好まない木の鬚はサルマンがアイゼンガルドを脱出するのを許してしまう。その時木の鬚は、彼からオルサンクの鍵を取り上げ、後にエレッサール王の一行がアイゼンガルドまでやってきた際には王の手に返却した。
木の鬚に率いられたエント達はアイゼンガルドの環を取り払って美しい庭園を復活させ、さらにエレッサール王からナン・クルニール一帯を与えられる。さらに望むならと、霧ふり山脈の西まで勢力を広げ、エリアドールを自由に往来する許しを与えられる。だが木の鬚にとって気がかりなのは、第四紀になって世界が変化しエントもこのまま消えていく運命であることだった。
メリーとピピンに別れを告げた木の鬚は、もしホビット庄でエント女について何か聞くことがあれば、自分に便りをよこしてくれるよう二人に頼み、森のなかへ歩み去っていった。
その他†
『J.R.R.トールキン 或る伝記』によると、低く響くような、木の鬚の話し声やつぶやき声は、トールキンの友人だったC・S・ルイスがモデルという。
日本ではしばしば「木の髭」と書かれることもあるが、原語のbeardは顎鬚を指す言葉であるため、日本語表記は「木の鬚」とするのが正しい。煩雑さを避けるためか、ひらがなで「木のひげ」とされることもある。
画像†
映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定†
俳優 | ジョン・リス=デイヴィス(声のみ) |
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日本語吹き替え | 石田太郎 |
当初、サルマンとの戦いを回避しようとした。だがピピンに誘導されて破壊されたファンゴルンの森を目の当たりにしたことで激昂・翻心し、エント達を呼び出してアイゼンガルドを急襲した。
『二つの塔』のエクステンデッド・エディションでは、原作の柳じじいに襲われる件がファンゴルンの森での出来事として描かれており、そこに生えていた柳じじいに襲われたメリーとピピンを、原作におけるトム・ボンバディルの歌を木の鬚が歌って救出している。
なお旅の仲間の冒頭部におけるガラドリエルのナレーションの一部は、原作において木の鬚が彼女に語った世の中は変わりつつありますからなあ。わしは水の中にそれを感じますのじゃ。土の中にそれを感じますのじゃ。空気の中に感じますのじゃ。(For the world is changing: I feel it in the water, I feel it in the earth, and I smell it in the air.)*3という台詞から取られている。
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ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
コメント†
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