大鷲 †
概要†
解説†
マンウェの使いである鳥。エルフや人間を運べるほど巨大で、優れた視力を持ち、言葉を話すことができる。彼らは中つ国の知らせをマンウェにもたらし、ヴァラールが中つ国に直接介入しなくなった後も、その一部は中つ国に留まって自由の民を助けることがあった。
第一紀にはソロンドールがその王であり、マンウェに派遣されてクリッサエグリムに巣を作ってエルダールやエダインを助けた。ソロンドールはモルゴスの顔面に傷を与え、怒りの戦いでは大鳥たちを率いて援軍として参加し、アンカラゴンをはじめとした翼を持つ龍たちと戦った。
第二紀になるとその多くはアマンへ帰った。だがヌーメノールの堕落の時には、ヴァラールからの警告の印として隊伍を組んでヌーメノールに飛来することがあった。
第三紀末には霧ふり山脈にその末裔たちの巣があった。
『シルマリルの物語』における大鷲†
「しかしケメンターリよ、そなたは
憶 えておらぬか、そなたの思いは常に独りで歌われたわけではないことを。そなたの思いとわたしの思いが出会い、われらは雲の上高く飛翔する大鳥のように、共に飛び立ったのではなかったか。これも、イルーヴァタールの御配慮により存在することになろう。そして、子らが目覚める前に、西方の諸王の大鷲 たちが、風の如き翼もて飛び立ってゆくであろう」*1
クウェンタ・シルマリッリオンの第二章によれば、大鷲たちはエントと同時に生まれた存在だという。アイヌリンダレにおいてヤヴァンナが彼女の眷属である生類の守り手を願った時、彼女の思いとマンウェの思いが出会い、それによって呼び出された精霊たちがオルヴァールとケルヴァールと交わって生まれたのが、エントと大鷲であった。大鷲はエルフが目覚めるより早くにアルダに現れる。
また、第一章には
ノルドール族が中つ国に逃亡すると、マンウェはソロンドールの一族を派遣してモルゴスの動向を見張らせ、また自由の民を助けさせた。大鷲たちは環状山脈のクリッサエグリムに巣を作り、後にトゥムラデンの谷間にゴンドリンが築かれるとその守護者となる。
ソロンドールはサンゴロドリムに捕えられたマエズロスと彼を助けに来たフィンゴンを救い出し、またフィンゴルフィンの遺骸をモルゴスの手から奪い返した。フーリンとフオルの兄弟をゴンドリンに運び、またアングバンドから脱出したベレンとルーシエンを救出したのも大鷲たちである。
ゴンドリンの没落では、大鷲たちがキリス・ソロナスでオークに襲われたゴンドリンの遺民を助けた。またソロンドールはバルログと相討ちになったグロルフィンデルの遺骸を谷底から救い上げた。
怒りの戦いではエアレンディルの空を飛ぶヴィンギロトと共にヴァリノール軍の最後の援軍として現われ、モルゴスの翼を持つ龍たちと戦った。
ヌーメノールのメネルタルマ山上の聖所には、「マンウェの証人(Witnesses of Manwë)」と呼ばれる三羽の鷲がおり、聖所と国土とをあまねく見守っているのだと信じられた。だが大鷲はヌーメノール人が堕落すると、ヴァラールからの警告の印として隊伍を組んで飛来することがあり、人々を恐れさせた。
『ホビットの冒険』における大鷲†
オオカミ広場でゴブリンとアクマイヌ(ワーグ)に追い詰められたビルボ・ガンダルフ・13人のドワーフの一行を、霧ふり山脈のワシの王が発見し、配下の鷲たちと共に救出する。ワシの王は、かつて自分がガンダルフに助けられた恩を返すため、一行を自分たちの巣まで運び、食べ物を与えて一晩休ませた後、岩山(カルロック)まで運んでやった(ワシの王によると、大弓で撃たれることがあるため、人間たちがいるところまでは近づきたくなかったという)。
その後、ゴブリンたちの動きを警戒していた鷲たちは、人間、エルフ、ドワーフの援軍として五軍の合戦に現れ、エレボールの高地を占拠していたゴブリンを払い落として戦局を有利に導いた。その後ダーイン二世はワシの王に黄金の冠を謝礼として渡し、友好の誓いとした。
『指輪物語』における大鷲†
指輪戦争の時代の大鷲の長はグワイヒィルで、これが『ホビットの冒険』におけるワシの王と同じ個体なのかははっきりしないが、ガンダルフとの会話に当時のことへの言及がないことからすると、おそらく別の鷲と思われる。
ラダガストからの伝言を聞いたグワイヒィルは、オルサンクでサルマンに捕らえられていたガンダルフを発見して救出し、エドラスまで送り届けた。さらにガラドリエルに遣わされたグワイヒィルは、山頂の闘い後にケレブディルの山頂で横たわっていたガンダルフを発見し、ロスローリエンまで送り届けた。
加えてグワイヒィルは、ガンダルフのために上空を飛び回って情報を集めた。
黒門の戦いでは、グワイヒィルが配下の大鷲たちを引き連れて西軍の援軍として現れ、ナズグールと恐るべき獣に立ち向かった(この時、自分が倒したトロルの下敷きになって意識を失おうとしていたペレグリン・トゥックは、鷲が現れたという知らせを聞き、ビルボの話にあった五軍の合戦を思い出しながら気絶している)。一つの指輪が破壊され、モルドールの力が崩壊すると、ガンダルフはグワイヒィルを呼び出し、ランドローヴァル、メネルドールらと共に、滅びの山の噴火に巻き込まれようとしていたフロド・バギンズとサムワイズ・ギャムジーを救出した。また一羽の大鷲はミナス・ティリスまで飛んでいき、勝利の報をいち早く人々に知らせた。
登場する大鷲の名†
映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定†
登場するが、言葉は発さず、名前もわずかにグワイヒィルが出るのみ。
『ロード・オブ・ザ・リング』ではオルサンクの頂上に捕らわれたガンダルフが、蛾を使ってグワイヒィルを呼ぶ。
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』では原作と同様黒門の戦いに現れるが、この時にも前触れとして蛾が現れる。
映画『ホビット』における設定†
『ロード・オブ・ザ・リング』における鷲と同様に、言葉は発しない。
『思いがけない冒険』では、ゴブリン町から出た後アゾグらとワーグに追い詰められたソーリンの一行を、原作と同様に助けているが、偶然ではなく、ガンダルフが蛾を使って助けを呼んだように描かれている。この時、蛾に呼びかけるガンダルフの言葉の中にグワイヒィルの名があるようにも聞こえるが、はっきりしない。
また大鷲たちは一行を自分たちの巣ではなく、カルロックへ直接運んでいる。
『決戦のゆくえ』では、ラダガストに呼ばれて彼を背中に乗せ、ビヨルンも運んで、五軍の合戦に参戦。グンダバドからエレボールに接近していたオークの新手を、ビヨルンと共に襲撃して壊滅させ、戦力がほとんど残っていなかった人間、エルフ、ドワーフを勝利に導いている。
ゲーム『ウォー・イン・ザ・ノース:ロード・オブ・ザ・リング』における設定†
ベレラムという若い大鷲が主要キャラクターとして登場し、プレイヤーの移動手段の他に、大型の敵や兵器を破壊する等、事実上四人目の仲間として活躍する。他にもグワイヒィルを含む同族が数匹登場するが、いずれも流暢な共通語で会話する。
コメント†
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