ヴァリアグ

概要

カテゴリー種族
スペルVariag(単) / Variags(複)

解説

モルドールの南東の地ハンドに住む種族。ペレンノール野の合戦で、モルドール側の軍勢に加わっていた。
王の帰還』では、人間である東夷南方人と並んで「ハンドのヴァリアグ」と言及されるが、後の文ではトロル人間オークと同じく太陽の光を忌むとされており、その正体は判然としない。

第三紀1944年に馬車族近ハラドハンドの人間と同盟を結んでゴンドールを攻撃したが、この出来事におけるハンドの人間について述べている記述*1でヴァリアグの名は登場しない。

The Peoples of Middle-earth』によると、『追補編』の草稿では「ヴァリアグ」の名はムーマクと同じく、サウロンの同盟者の言葉とされている。

備考

スラブ語でvariagとは「傭兵」を意味し、歴史的にはスカンディナヴィアからロシア地域を経由して黒海周辺まで進出してきた「ヴァイキング」の一派を指す言葉である(Wikipedia:ヴァリャーグ)。彼らは進出先の東ヨーロッパで傭兵として重用された。

これらの歴史的事実を踏まえると、ヴァリアグとはハンドの傭兵集団を指す呼称である可能性もある。ただしスラブ語との語形の一致は偶然かもしれず、推測の域を出ない。

Iron Crown Enterprisesによる設定

ハンドに住む人間の種族として登場する。

特徴

外見
中背で、黒や茶色の肌をしている。男性は髭と髪を編み込むか結い上げており、女性は精巧な髪飾りを付けている他、多くの者が入れ墨を入れている。
文化
の扱いに長け、勇猛で恐れを知らぬ民として知られ、隣接するハラドリム東夷の支配者たちはしばしば彼らを暗殺者や傭兵として重宝した一方で、農耕や交易に従事する者もいる。衣服は主に皮革で作られ、黒と赤もしくは茶色を対比させた色合いを好む。多くの氏族は蝙蝠や馬を紋章として用いており、金や銅で作られた装飾品を好んでいた。
歴史
バルホス族とはイオリアグ(Ioriag)という民を共通の祖先に持つ。ハンドの地に住み着いて以降は部族間の抗争が続いていたが、第二紀の中頃、上カ=オン(ハンド北部の地方)の首長ウーヴァタによって統一された。ウーヴァタはその後、モルドールに接近し、サウロンから九つの指輪の一つを受け取り、第9位のナズグールとなった。これによってハンドの民は影の支配下に入った。その後サウロンとウーヴァタが一時姿を消すと、イオアグはゴンドール辺境の民に過ぎなくなり、しばらくの間は大きな脅威とはならなかった。第三紀1000年頃、ウーヴァタがハンドに帰還、ヴァリアグと呼ばれるようになっていた彼らは再び影の支配下の民となる。ウーヴァタに籠絡されたヴァリアグの民は首長たちに率いられ、北の峡谷を越えてリューンに侵入し、ヌラド(Nurad)をはじめとする周辺地域を併合した。さらに南では近ハラドの国々を占領して王たちを傀儡とした。第三紀の中頃には北の馬車族とも結託し、リューンからハラドに股がる一大連合を形成した。
言語
彼らが使用するヴァラドジャ語(Varadja)はオーク語暗黒語から大きな影響を受けている。

登場するヴァリアグ

ゴウル・イトー(Gour Ito)
第三紀中頃のヴァリアグ王で、おそらくオーヴァタ二世の後継者。帝国拡大期の王で、チェイ・サルトを属国化した上、さらに東のカルガリス・アハールまでも征服した。アハール人の王子パルネリオン・セイを人質としてSturlurtsa Khandに住まわせ、ヴァリアグの臣下として育成したが、アハールに戻ったパルネリオンに反乱を起こされ、鎮圧のために送った軍も大敗する。アハールの独立を許したことで急激に力を失い、やがて暗殺された。
キオニド・アチフ(Kîonid Achef)
ウーヴァタの父。ハンド東部の王子だったが追放され、一族と共に戦いと放浪の内に過ごした。その途上、隠れ家の一つであるオルバマール(Olbamarl)の洞窟でウーヴァタが生まれた。第二紀1988年、息子と共に軍を率いてノズ=ペカ(Noz Peka、小刀の川の意味)の戦いに勝利し、ハンド北部の王座を得たがその直後に死んだ。
ミオニド・アチフ(Mionid Achef)
キオニドの兄弟。ウーヴァタの叔父。キオニドの死後、王座を継いで、イオリアグの伝統に則って甥を殺害しようとしたが、ウーヴァタの逃亡によって失敗した。2000年、ハンド南部の支配者となったウーヴァタの軍との戦いに敗れて殺害された。
オーヴァタ二世(Ôvatha II)
オラス王家の当主(Orath tribe)オーヴァタ一世の孫。ICE設定におけるヴァリアグの王たちの中で最も詳細に事績が記録されている。第三紀1636年、ヌラド攻略の最中に父オヴァグ・イト-(Ovag Ito)が悪疫により死んだのを受けて13歳で当主となった。16歳でヴァリアグの首都であるハンド・アムー(Khand Amu)に入城し、ヴァリアグ全部族の王であるクール(Khûr)に即位。第三紀においてハンド全体を統治した二人目の王となった。ヴァリアグ領を拡大し、その影響力はヌラドやチェイ・サルトを越えたリューンの広範囲に至り、ハラドの奥深くにまで及んだことから、「馬上の殺戮者(Horse-slayer)」と称された。
オーヴァタ三世(Ôvatha III)
ウーヴァタの子孫。通称「歯なし(Toothless)」。第三紀1940年、リューンで台頭したイガス(Igath、馬車族の前身))の侵略に対抗するため全ヴァリアグの団結を呼びかけ、王となった。後に馬車族と協定を締結し、領内を自由な通行を許可した。その後ハラドリムとも同盟を組み、ゴンドールへの侵攻を画策する。それは1944年に実行に移されたが、ポロスの渡しエアルニル二世率いる軍勢に撃破されて討ち死にした。
ウオニド・イルボ(Uonid Irbo)
ウーヴァタの子孫。イオリアグの大半の部族を支配下に治めたが、第三紀1100年頃、ハンドに帰還した先祖ウーヴァタによって殺害された。
ウルイグ・ウフポフ(Urig Urpof)
第二紀にハンド南部を支配した王。イオリアグの全人口の三分の二を支配する強力な支配者で、本拠とするSturlurtsa Kha-onは南ハンドの首都とされていた。出奔したウーヴァタを客将として迎え入れたが、1999年に軍団の支持を得たウーヴァタによって廃位され、ウルポフ王朝は滅亡した。

Games Workshopによる設定

ハンド人(Khandish)の名が用いられており、ヴァリアグの名は登場しない。
徒と騎馬双方に優れた精鋭の民で、長柄の斧と弓で武装ししている。王とその親衛隊をはじめ、身分の高い戦士は戦車に乗っている。

ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定

ハンド出身の傭兵として登場する。東夷の一派だが、クンドラール(Khundolar)やジャンゴヴァール(Jangovar)等、明確にサウロンの同盟者となっている他の民とは違い、待遇に不満を感じれば簡単にモルドールへの忠誠心を捨てる。そのため東夷ではなく、ウンバール海賊ごろつきと同じ盗賊(Brigands)に分類されている。また、太陽の光を忌むという記述を反映してか、血の気の無い青白い肌をしている。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 自分が認めたくない俗説に対して憤激を露にした結果、かえってその俗説が広まる結果になったというね -- 2022-03-30 (水) 18:51:01
    • この件に限らず、人間社会ではよくある事ですね。 -- 2022-06-08 (水) 20:59:32
  • Variagが本当にスラヴ語由来だとしたら、その話者が何処にいるのかという新たな疑問が提示される。ハンドの現地人なのか、それともハンドと取引のある傭兵の仕入先(リューン湖周辺?)にスラヴ語を話す人間がいるのか。個人としてはどちらも有りそうだとは思うが。 -- 2022-04-02 (土) 18:28:17
    • 後者の場合、ハンド人ではなくゴンドールがリューン出身の傭兵に対して使った語の可能性も出てくる -- 2022-04-02 (土) 18:30:26
    • 元ネタのように、第三者が特定の地域出身の民族やその民族の戦士団を呼んだとは限りませんからねー。自称かも。
      (勿論、ご指摘のようにゴンドールあたりの呼称が定着した可能性もあり)
       
      「ハンドのヴァリアグ」というのがセットの呼称なのかどうかですね。 -- 2022-04-02 (土) 20:00:21
  • ヴァリアグが北方人の血を引くのなら先祖からの騎馬戦法は伝え残っているのだろうか。
    そもそもハンドに騎乗に向く馬がいたのかは分からないけど。 -- 2022-04-10 (日) 17:16:18
    • 北方の民全てが騎馬に秀でていたとは限らない。現に谷間の国の民や森人なんかもいるし、ハンドからすればリューンの湖の辺りの出身でも北方人と言える。 -- 2022-04-10 (日) 20:04:03
      • そっすね。 -- 2022-04-10 (日) 20:05:23
      • 北方の民(Free People of the North)である事とロヒアリムの祖先の北国人(Northmen)である事は同じ様で違う。字面だけ見れば紛らわしいけど。 -- 2022-04-11 (月) 01:12:21
      • 「ノースメン」の指輪世界における意味くらい知ってから反駁すればよかったのに…。 -- 2022-04-11 (月) 01:27:46
  • 「戦いの幕開け」の自分のサーバーではヴァリアグが覇権を握る寸前になってる -- 2022-08-14 (日) 10:36:10
  • 原作でたった一文の字面が並んだだけなのに、なんか惹きつけられるものがあるよな。不思議。
    設定用語だけが一人歩きしてせせこましい創作なんて幾らでもあるのにね。 -- 2022-09-23 (金) 13:31:44
  • だからさぁ......間違った事書いてないし大幅に文量が増えてる訳でも無い、知って害になる事も書いてないのに何で何度も差し戻すのよ???
    ↓閲覧した他の皆さん、私の書いたのに間違ってる所ありますか???
    『スラヴ語で「傭兵」を意味するヴァリャーグ(Varangians)との関連が指摘されている。元は黒海北岸やヴォルガ川周辺のスラヴ系住民がスカンディナヴィア方面から海を渡ってやって来る人々に対して使った名称で、彼らが傭兵や行商を生業にしていた事に由来する(Wikipedia:ヴァリャーグ)。東ローマ帝国ではヴァラングと呼ばれ、皇帝の近衛部隊として重宝された(後の時代には北方系以外の異民族も含む混成部隊となり、やがてギリシャ人に同化した)。
    これらの歴史的事実を踏まえると、ヴァリアグとはハンド特有の氏族ではなく傭兵集団を指す呼称である可能性もある。ただしスラブ語との語形の一致は偶然かもしれず、推測の域を出ない。』 -- 2023-02-11 (土) 02:11:28
    • 散々恥ずかしい思いして方々でネタにされて一年近くそんな風に扱われてまだ懲りないわけ? -- 2023-02-11 (土) 02:26:02
    • 東ローマ帝国ではどうこうとかいう細かい話は、中つ国の用語についての解説を記すというこのWikiの本題から逸れるため削除すると決着しています -- 管理人 2023-02-11 (土) 02:36:47
    • ヴァリアグコメント欄で荒ぶってた人も大概だが、だからって何十回も差し戻しされてんのに自分が間違ってないと思えるのも大概ですよ。
      俺もビザンツの歴史は好きで何冊か関連書籍持ってるけど、だからって管理人さんの言うようにそれを中つ国の用語説明に持ってくる必要はないじゃん。
      用語解説は必要最低限の情報でいいんだよ。あなたがこだわるそれらはコメント欄で語るべき話題。 -- 2023-02-11 (土) 08:54:55
      • ・ロシア地域を経由して~←実際に海を渡ってヴォルガ川やドニエプル川を経由した移動ルートを辿ったのだからそこを多少詳しくする程度が余剰だとは思えない。「傭兵や行商を生業にしていた事に由来」も同様。
        ・ヴァイキングの一派を指す←必ずしもヴァイキングだけを指す言葉ではない
        ・彼らは進出先の~←東ローマの件が不要ならこの一文も無くていい。
        東ローマでは~以降はともかく、前半部分は別に変えてどうこう言う程のものでもないかと -- 2023-02-11 (土) 14:26:06
        • いやですから…その説明の追加は「編集者が達成感を得る」以外で、ヴァリアグへの理解に何か役立つもの、必要な情報なんですか?
          ヴァリアーグが辿った交易や植民ルート、ヴァリアーグ親衛隊の情報がないと中つ国のヴァリアグの理解は滞ったり、誤ったものになりますか?
          なりませんよね?
          念のため断っておきますが、俺はヴァリアグ=北方人の一派の末裔という説は個人的にロマンがあって非常に好きですしその立場に立って議論したいとも思います。ですがそれはコメント欄で語るべきことであって項目の解説部でやる事ではないでしょう。 -- 2023-02-11 (土) 14:36:53
          • 勘違いさせたようですが、私は一番上のコメント主とは別の者です.....あくまでも第三者として申し上げました。
            • 別にそうだとは思ってないですよ。「加筆してもいいんでは?」という意見に対してなぜそれが不要かを説明しただけですから。繰り返しですみませんが、内容が妥当か適切かよりこの場合は「中つ国の事象を語るのに我々の世界のことを語る必要があるか否か」が重要なのです。
              それを用いないと理解しづらい点がある特例でもない限り、そうした情報は解説を冗長にするのみですから。 -- 2023-02-11 (土) 17:04:40
            • 最低限の情報でいいのならば、北方人との関連を印象付けるヴァイキングという単語も無くていいと思います(先述の通り必ずしもヴァイキングだけを指すとは限らないので。同じ理由で親衛隊の記述も不要)。発端になった人はおそらくそれが気に入らないから無茶苦茶言ったのだろうに、ヴァイキングという単語を無くそうとするのも許さないのが謎です。
              • 「variagとはスラブ語でヴァイキングのこと」というのは必要最低限かつ一般的な説明になっています(大まかな出自から集団イメージ、スラブ圏における外国人であることまで簡潔に説明できている)
                「必ずしもヴァイキングだけを指す言葉ではない」というのは専門的な話であって一般説明の範疇からは外れている(厳密な集団内訳などの定義はwkipediaに任せるべき)
                「進出先の東ヨーロッパで傭兵として重用された」は、なぜヴァイキングのスラブ語形であるvariagが「傭兵」なのかを説明している段で、これがないとなぜヴァイキングなのに傭兵なのかが理解できないので必要最低限な情報 -- 2023-02-11 (土) 18:24:47
              • variagとは「ヴァイキングのことで、東ヨーロッパに進出し、傭兵として重用された」
                この三点セットはこれ以上付け加えるべきでも削るべきでもない最も簡潔な形でヴァリャーグについて説明できている文章だと思います
                管理人もそう判断したからこそ、この文章に御自ら書き換えた上で決着宣言をしたのだと思いますし
                これをさらに削れだとか加えろだとか言うのは、もはや編集者個人の自己満足でしかないのではないかと -- 2023-02-11 (土) 18:31:55
                • 去年「勝手に消すとか餓鬼かよw」とかpgrしてた人も最初からそういう風に筋道立てて主張してりゃね。 -- 2023-02-11 (土) 19:45:56
              • 08:54:55に本話題元を投稿した者ですが↑の人に完全同意ですね。
                そもそも管理人さんが決着した内容ですし。 -- 2023-02-11 (土) 18:41:10
    • 「variag」と全く同じ単語がスラブ語にもあるから関連項目になっているのに、語形が違うVarangiansって言葉をわざわざ紹介しようとする意味がわからない。なんで中つ国のwikiでこれが関連項目になっているのか理解していないのでは? -- 2023-02-11 (土) 13:29:26
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