レンバス

概要

カテゴリー物・品の名前
スペルlembas
異訳レムバス
その他の呼び名エルフの行糧(waybread of the Elves)
レンバスの薄焼き菓子(wafer of lembas)
エルフの薄焼き菓子(elven-cake)
コイマス(coimas)

解説

原形はシンダリンのlenn-mbassで「旅行用食糧(journey-bread)」の意。クウェンヤでは「命の糧(life-bread)」の意のコイマスと呼ばれる。単に行糧薄焼き菓子とも呼ばれる、エルフの携行保存食。
一枚食べるだけで一日たっぷり歩けるほど活力が付き、走りながら食べることもできるほど扱いやすく、非常に美味。軽く持ち運びに適し、また葉に包まれたままで割れなければ何日でも効能が落ちない。

食べものの大部分が非常に薄い焼き菓子の形をしていて、それは外側がうすいとび色に焼け、中がクリーム色をしており、あらきの粉でできていました。*1

大変貴重なものであり、エルダールの習慣によると、レンバスを貯蔵することも与えることも、王妃のみに属する権限であるという。
エルフ以外の種族の者にこれが与えられるのは極めて稀なことであった。第一紀にはメリアントゥーリンを助けに向かうベレグに与え、べレグはこれをガウアワイスの負傷者や病人を癒すのに用いた。また、ゴンドリンを目指すトゥオルヴォロンウェはヴォロンウェが持っていたレンバスで過酷な冬の飢えを凌いだ。

第三紀末の指輪戦争ではガラドリエルから指輪の仲間に与えられた。最初レンバスを見たギムリクラムだと勘違いして顔をしかめたが、試しに少し口にするとすぐに態度を変え、ひとつ平らげてしまった。
指輪の仲間は各々その旅路においてレンバスの効能に大いに助けられた。特に他の食糧が尽きた中でモルドールの荒地を横断しなければならなかったフロド・バギンズサムワイズ・ギャムジーは、これによって命をつないだ。
一方でフロドからレンバスを分けてもらったゴクリは吐き出して咳こみ、これを「埃と灰」と形容した。オークもまたレンバスを嫌悪したらしく、キリス・ウンゴルの塔のオークはフロドの所持品の中にあったレンバスを床にぶちまけている。

終わらざりし物語』によると、最後の同盟当時のドゥーネダインも、エルフのレンバスに準ずる効能を持つ「行糧の薄焼きパン(wafers of a waybread)」を持っていたという。

『The Peoples of Middle-earth』における記述

The Peoples of Middle-earth』“Of Lembas”には、レンバスについてより多くのことが述べられている。

エルダールによると、レンバスは元々大いなる旅において長い旅路の助けとなるよう、ヤヴァンナアマンで育つ穀物の一種から作りだし、オロメを通じて与えられたものだった。

レンバスの材料となる穀物は降り注ぐあらゆる光を栄養とするため、僅かな太陽の光のみで実を結ぶ。また寒期を除けばどの季節に蒔いてもすぐに生育した。ただし中つ国の植物の影の下では育たず、モルゴスが住む北方から来る風にも耐えられなかった。そのためエルダールはこの穀物を守られた土地や、日の光が当たる空き地で育てた。穀物にはアマンの強い生命力が含まれ、レンバスを食す者にその力を与えた。

収穫には金属の刃は用いられず、大きな金色の穂が一つずつ手で集められた。地面から手で引き抜かれた白い茎からは穀粒を保管するための籠が編まれた。その輝く藁に触れる虫や害獣はおらず、腐敗やカビ等の中つ国の害悪とも無縁だった。
レンバス作りに携わるのは「ヤヴァンナの乙女(maidens of Yavanna)」であるエルフの女性のみで、ヴァラールから教わったその技は彼女たちの秘密であった。彼女たちはクウェンヤYavannildi(ヤヴァンニルディ)、シンダリンではIvonwin(イヴォンウィン)と呼ばれた。
ヤヴァンナに起源を持つものゆえ、レンバスの保管と贈与はエルダールの民の中で王妃のような最高位の女性の権限とされた。そのような女性はクウェンヤmassánie(マッサーニエ)、シンダリンbesain(ベサイン)*2と呼ばれた。

中つ国にあってはレンバスは常に貴重なものであったため、エルダールの間にあってもこれは困難な長旅を行く者や、怪我・苦痛で命が危険な者にのみ与えられた。
レンバスは基本的に人間には与えられなかった(エルフから愛された人間が必要に迫られた際に与えられた、僅かな例があるのみ)。これはエルダールがレンバスを有限の命の者には広めないよう命じられていたためであり、有限の命の者が頻繁にレンバスを食すると、その命に倦み疲れてエルフたちの間に留まりたくなり、禁じられたアマンへ行くことを望むようになるからだと言われていた。

薄焼き菓子(wafer)

英語のウェハー(wafer)とはイーストを用いない薄焼きのパンのことで、いわゆるウェハースの類の菓子を意味する他、キリスト教の聖体受領式に使われる聖餅せいへいを指す語でもある。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

劇場公開版ではカットされたが、『ロード・オブ・ザ・リング』のエクステンデッド・エディションで、指輪の仲間がレンバスを与えられる場面が直接描かれている。この場面では原作と異なり、レンバスを口にするのはギムリではなく、ピピンメリーになっている。
二つの塔』および『王の帰還』では劇場公開版でも、フロドサムがレンバスを食べている様子が描かれた。『王の帰還』では、ゴラム(ゴクリ)がサムとフロドの間を裂こうとした目論見にレンバスの欠片が使われた。

なお、『旅の仲間 エクステンデッド・エディション』に登場したものと、『二つの塔』『王の帰還』に登場したものとでは厚みが大幅に異なり、後者では大きな乾パンのようになっている。

外部リンク

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • この場合はエルフと金属の相性より、レンバスとの問題だと思う。
    ただ、実際にレンバスの原材料の穀物?を金属で刈り取っても実際には味や効果には左右しなそうだけど。
    どちらかというと、レンバスおよびそれを生み出す大地への感謝と敬意が素手で摘むという行為に現れているように感じます。 -- 2021-12-10 (金) 11:41:21
    • 実際に、を2回言っちゃった笑 -- 2021-12-10 (金) 11:41:50
      • あなたが、気にすることではありませんよ。 -- 2021-12-10 (金) 20:00:02
  • そんな貴重な食糧を怒りのあまり握りつぶしてしまうサムワイズ・ギャムジー(映画) -- サエラン 2023-02-20 (月) 14:08:33
  • レンバスはエルフ以外には与えることも珍しいのに・・・・・ -- 2023-02-20 (月) 18:21:56
  • レンバスをお手頃かつ忠実に再現したのが大塚製薬のカロリーメイトチーズ味ってワケ -- ガンファイター橋爪 2023-02-26 (日) 16:17:26
  • 栄養はともかく味や形状はハロッズのショートブレッドに似ていると勝手に思っている。あれなら舌の肥えているホビットにも喜ばれる逸品だ。 -- 2023-02-26 (日) 17:19:21
  • バスブーサっぽいしっとりしたお菓子的なものだったと予想 -- 2023-09-13 (水) 19:51:42
    • 保存食だし携行食だから水分は極力抜いてるのでは?(保存性+軽さ)
      それでも口が渇いてても食べやすい、みたいなエルフの技はありそう。
      しっとりしてても長持ち、ではあってもその分重量は増えますからね。 -- 2023-09-14 (木) 05:52:49
      • 長旅に持参するとなると結構な分量、重さになるだろうからなあ。水分を極力抜いておかないと余計な体力の消耗に繋がる。レンバスさえ食べれば水も要らない、くらいの究極便利アイテムだと多少重くてもいいんだろうけど、作中の描写から喉は渇くようだし。 -- 2023-09-17 (日) 22:27:24
    • いつもリッツの食感を空想しながら王の帰還を見てます。 -- 2023-09-17 (日) 11:32:38
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