マンウェ†
概要†
カテゴリー | 人名 |
---|---|
スペル | Manwë |
その他の呼び名 | スーリモ(Súlimo) 長上王(Elder King) アルダの風の王(Lord of the Breath of Arda) アルダの支配者(Ruler of Arda) 西方の王(Lord of the West) ヴァラールの王(Lord of the Valar) |
種族 | アイヌル(ヴァラール) |
性別 | 男 |
生没年 | |
兄弟 | メルコール(兄弟) |
配偶者 | ヴァルダ(エルベレス) |
解説†
アラタールの一人に数えられるヴァラで、ヴァラールの最高位者。大気と風の支配者であり、クウェンヤで「風を吹かすもの(the Breather)」を意味するスーリモとも呼ばれる。
マンウェは中つ国を含む全世界アルダの長上王である。創造神イルーヴァタールの考えを最もよく理解するものであり、イルーヴァタールの代理人として、平和のためにアルダを統治する。
詩と歌を愛し、青い衣を纏って目に青い炎を燃やし、ノルドールが作ったサファイアの王笏を持つ。その声はさながら烈風やトランペットの如く喨々と響き渡る。
メルコールとは兄弟。メルコールが最も力あるアイヌであるなら、マンウェは最も高貴なアイヌであった。
后であるヴァルダと共に、タニクウェティルの最高峰オイオロッセにある宮居イルマリンに住まっている。滅多にヴァルダと離れることはなく、彼女と共にいれば他の誰よりも遠くを見ることが出来ると言われている。
自身の伝令使としてマイアのエオンウェをもち、使者として鷲を使う。
「そうあるであろう! 歌は高価な犠牲によって
贖 われるであろう。しかし、よくぞ贖ったと見なされよう。それだけの代価を支払うほかないからである。かくて、まさにエルがわれらに言われた如く、以前には考えられたこともない美がエアにもたらされ、悪しきものもいつかはよくなるであろう」*1
最も高貴な者†
イルーヴァタールは、マンウェをメルコールの兄弟として創造した。メルコールが最も力あるものであったのに対し、マンウェはイルーヴァタールの意図を最もよく理解するものであった。
創世の音楽においてメルコールが不協和音を生じさせて〈第一の主題〉をかき消してしまうと、マンウェは〈第二の主題〉の主要な奏者としてメルコールに対抗する。〈第二の主題〉には次第に高まる力強さがあったが、結局メルコールの暴力に勝利することはできなかった。
そのためイルーヴァタールは決してかき消されることのない悲しみと美しさを有する〈第三の主題〉を提示。アイヌル達はそこにイルーヴァタール自身から生じたエルフと人間(イルーヴァタールの子ら)の存在が含まれていることを知って驚嘆する。
風の王マンウェ†
マンウェは創世の音楽の中で、大気と風にもっとも配意した。その心はアルダを被う大気の層から芝生にそよぐ微風に到るまでくまなく及んでいる。
また、彼はヴァリノールができるまではウルモと最も親しく、マンウェの治める大気は、ウルモの治める水とともに、雲や雨、雪を形づくってメルコールの猛威に対抗した。こうしてメルコールの暴力からも美と恵みが生じた。
アルダの王マンウェ†
創世の音楽が終わり、イルーヴァタールが虚空の中に物質世界エアを置くと、多くのアイヌルは世界とそこに暮らすはずのイルーヴァタールの子ら(エルフと人間)への愛にひかれ、エアへ下向することを選ぶ。かれらの使命は、いずれ生まれくる子らのために、いまだ幻視されたのみで実現していない世界とその歴史を準備することであった。
しかしメルコールは世界と子らを支配することを欲し、地球は自分のものだと宣言してこれを思うままに形づくろうとする。マンウェはアイヌルの力を集めてメルコールに対抗し、地球の形を整え続けたが、メルコールの絶えざる妨害のために世界は創造の歌にあったほど美しくはならなかった。
とはいえマンウェの下でヴァラールとマイアールはメルコールを退け、地球の建造を成し遂げる。時がくると、マンウェはすべての王たちの第一位、アルダの長上王に任じられた。
マンウェの統治する領域である地球は、アルダすなわち「王国」と呼ばれる。
西方の王マンウェ†
ヴァラールと臣下であるマイアールははじめ、中つ国の中央にあるアルマレンの島に住まっていた。その南北にはアルダを照らす二つの灯火が立てられた。灯台はアウレが築き、明かりはヴァルダが点し、マンウェがそれを聖めた。
しかしアルダに舞い戻ったメルコールは二つの灯火を急襲してこれを破壊する。マンウェの怒号とトゥルカスの足音はメルコールを怯えさせたが、ヴァラールは灯火の倒壊により生じた混乱を鎮めるのに精一杯であった。このためにアルダの秩序は大きく損ねられる。
ヴァラールは、エルフと人間が目覚める前にこれ以上の破壊が引き起こされるのを避けるため、アルダの西の果てにある大陸アマンへ撤退し、そこに破滅から救われた善きものを集めて楽園となるヴァリノールを築く。二つの灯火に代わるものとしてヤヴァンナが二つの木を生じさせ、アマンの海岸沿いには防壁としてペローリの山脈が隆起させられた。
しかしマンウェが中つ国を見棄てることはなく、ペローリ山脈の最高峰タニクウェティルに据えられた玉座から、その目は絶えず東の方に向けられ、鳥たちが彼の許に便りを届けるのである。
イルーヴァタールの代弁者マンウェ†
エアの中に入ったアイヌルたちは、時の外にいるイルーヴァタールとは隔絶され、その意志をうかがい知ることはできなかった。しかしアルダの王たるマンウェだけは、心の奥に問いかけることで、イルーヴァタールの言葉を聞くことが出来た。
- エントと大鷲の誕生
- アウレが独断で創造したドワーフがイルーヴァタールに嘉納されたことを知ったヤヴァンナは、彼女の愛するする植物たちが、ただドワーフやイルーヴァタールの子らに利用されて虐げられるのをおそれ、植物のうちとくに木々を守るものの存在を望む。ヤヴァンナは創世の音楽に「木々の守り手」のことが歌われていたのを覚えていたが、かれらが確かに現れるのかをマンウェにたずねた。
マンウェが思案していると、イルーヴァタールがそれに応えて創世の音楽が歌われた時のことを再度マンウェに体験させ、当時は気付かなかった様々なアイヌルの思いが歌に編み込まれていたこと、そしてイルーヴァタールはそれらの思いを全て承知していることが告げられる。
かくして、ヤヴァンナはエルフが目覚める時、エントもまた目覚めることを知った。そしてまた、マンウェも大鷲たちがエルフよりも前に中つ国を訪れることを知った。
- メルコールの捕縛
- 中つ国にエルフが目覚めると、メルコールはかれらに害をなした。オロメがこれに気づき、ヴァリノールに知らせをもたらすと、ヴァラールはいかにしてエルフを救い出せばよいのか審判の輪に集って話し合った。
マンウェがイルーヴァタールに問いかけると、たとえいかなる犠牲を払おうと、もう一度アルダの支配権を手に入れ、クウェンディ(エルフ)をメルコールの影より救い出すべきである、との答えを得る。かくしてヴァラールとメルコールの合戦が行われた(力の戦い)。
メルコールは捕らえられてマンドスの砦に投獄され、エルフたちはヴァラールの住むアマンの地へと招かれて共に住むことを勧告された。
- ベレンとルーシエンの生還
- レイシアンに語られている通り、死んだベレンを追ってマンドスの館に来たルーシエンは二つの種族の悲嘆を歌にこめて歌い、マンドスの心を動かした。マンドスからこのことを知らされたマンウェは、イルーヴァタールに問いかけ、ルーシエンには選択が与えられることとなった。つまりエルフとしてヴァリノールで暮らす代わりにベレンと別れるか、人間としてベレンと共に中つ国に戻るかという選択である。
ルーシエンはベレンと共に生きることを選び、やがて時がくると「人間として死んだ」。この二人から半エルフの血筋が生じ、アイヌルとエルフの血が後代の人間の中にも受け継がれることとなった。
ヴァンヤールの友マンウェ†
アマンの地へ至ったエルフのうち、イングウェに率いられてやってきたヴァンヤールをマンウェは最も愛した。
マンウェはかれらに歌と詩を授け、ヴァンヤールはタニクウェティルのかれの膝下に住んだ。
悪を知らぬ者マンウェ†
メルコールの刑期であった三期が過ぎ、ふたたび審判の輪に引き出された彼がへりくだって許しを乞うと、マンウェは彼の悪は矯正されたものと信じた。マンウェは悪を知らなかったため、メルコールがまた悪をなすとは思わなかったためである。
釈放されたメルコール(モルゴス)は二本の木を枯死させ、さらにエルフと人間とのあいだに虚言を蒔き、かれが虚空に投げ出されたあとも、イルーヴァタールの子らの心に影を落としている。
怒りの戦い†
フェアノールに率いられたノルドールの叛乱に、マンウェはひどく心を痛め、落涙した。かれらのことを愛していたためである。しかし同族殺害の罪を犯し、中つ国へと渡った叛逆者のためにかれは助力を与えず、かれらがアマンの地へと逃げ帰ることも禁じた。
イルーヴァタールの子らがモルゴスを相手に敗北の歴史を重ね、ついにかれらの運命が極まろうとしたとき、エルフと人間のあいだに生まれたエアレンディルは、運命に守られてアマンの地へと航海し、ヴァラールの眼前で両種族への許しと助力を乞うた。
ヴァラールは懇願を聞き入れて立ち上がり、マンウェは両種族のために危険を冒したエアレンディルに報いるため、彼と彼の妻エルウィング、そしてかれらの子であるエルロンドとエルロスに、エルフと人間いずれかの運命を選択すべしとの宣告を下した(半エルフ)。
モルゴスの打倒に、マンウェは自身の伝令使であるエオンウェを派遣し、エオンウェはヴァリノールの軍勢を率いてモルゴスを打ち破った(怒りの戦い)。再び捕らえられたモルゴスはまたもへりくだって許しを乞うたが今度は許されず、虚空へと追放された。
ノルドールへの怒りは停止され、アマンはすべてのエルダールの故郷として開放され、多くのエルフが船出していった。
かくして第一紀は終わった。
ヌーメノールの没落†
人間で唯一モルゴスを敵として戦ったエダインに、ヴァラールは報償としてアマンに近い大海の島ヌーメノールを与える。
加護を受けたヌーメノールの島とヌーメノール人は他の人間を遥かにしのぐ繁栄を手にしたが、かれらはアマンの地に近づくことを禁じられていた(ヴァラールの禁)。マンウェはそうすることによって、死すべき運命の下にあるかれらが手にすることのできない不死に焦がれるのを回避しようとしたのだった。
だが、モルゴスが人間に投げかけた影はヌーメノールまでかれらを追い、ヌーメノール人はやがて限りある命に不平を漏らし、エルフとヴァラールを敵視するようになる。
モルゴスの召使サウロンにたぶらかされたヌーメノール人はとうとう力ずくで「不死」を奪おうとアマンへと進軍してきた。この時マンウェとヴァラールはアルダの統治を一時的に手放し、イルーヴァタールの采配をあおいだ。するとイルーヴァタールはヌーメノールの島をその民と文明もろとも沈め、さらにアルダを球形に造り替え、アマンを世界の圏外へ移した(世界の変わる日)。
イスタリの派遣†
サウロンの力が増し中つ国の危険が高まると、マンウェは会議を開き、中つ国の民を助ける使者をマイアのうちから募った。しかし、かれらは中つ国の民を支配して、サウロンに直接挑むことは許されなかった。使者たちは聖なる力を捨て、人間の弱い肉体をまとい、助言をもって中つ国の民を助け、民の力でサウロンの打倒を実現しなければならなかった(イスタリ)。
マンウェはオローリンを選び、かれを中つ国へ送った。オローリンはガンダルフとして二千年にも渡る旅を続け、彼の助力を受けた自由の民によってサウロンの打倒はなされた。
かくして第三紀は終わった。
タニクウェティルに坐する者†
今でもマンウェはイルマリンの玉座に坐し、その御代は無窮に続いているが、世界が終わる時までタニクウェティルから降りてくることはないという。
マンウェの民のマイアール†
マンウェの民として言及があるのは以下のマイアールである。
Include/アイヌル†
コメント†
最新の6件を表示しています。 コメントページを参照