マエズロス†
概要†
カテゴリー | 人名 |
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スペル | Maedhros |
異訳 | マイズロス |
その他の呼び名 | 丈高きマエズロス(Maedhros the tall) |
種族 | エルフ(ノルドール) |
性別 | 男 |
生没年 | |
親 | フェアノール(父)、ネアダネル(母) |
兄弟 | マグロール、ケレゴルム、カランシル、クルフィン、アムロド、アムラス(弟) |
配偶者 | なし |
子 | なし |
解説†
フェアノールとネアダネルの長子。フェアノールの息子たちの長兄。
七人の息子たちの中では最も賢明な人物だったが、最後までフェアノールの誓言に縛られて非業を重ね、身を滅ぼすことになった。
フィンゴンとの友情†
元々マエズロスはフィンゴンの友人だったがヴァリノールの不和のため彼と疎遠になり、父フェアノールおよび兄弟たちと共にシルマリルを奪回するという誓言を立てて中つ国に帰還する(しかしフィンゴンとの友情のためにアラマンでの裏切り行為には消極的であり傍観を保った)。
ダゴール=ヌイン=ギリアスの合戦でフェアノールが死ぬと、マエズロスはモルゴスとの休戦交渉に応じる。彼は十分に警戒していたものの、罠にかけられて人質となり、右手首に鋼の手枷を付けられてサンゴロドリムの絶壁に吊り下げられた。
この姿を、救出に来たフィンゴンが発見する。しかしフィンゴンは彼のいる場所までは達することができず、苦痛に苛まれたマエズロスは自分を弓で射殺してくれるよう頼んだ。この光景を発見した大鷲の王ソロンドールがフィンゴンをマエズロスの元まで運び、フィンゴンはマエズロスの右手を切り落として手枷から救い出した。そのまま二人はソロンドールに運ばれてミスリムに帰還した。
この一件によってフィンゴルフィン家とフェアノール家の不和は和らげられた。
かれの肉体は責め苦の苦痛から回復し、再び元気を取り戻したが、苦痛の影は心に残った。そしてかれは、失った右手以上に巧みに、左手で必殺の剣を揮った。*1
マエズロスの辺境国†
ミスリムに生還したマエズロスは、アラマンでの裏切り行為を謝罪してノルドールの王権を放棄する。このためノルドールの上級王位はフィンウェの次男であるフィンゴルフィンに渡ることになった。
だが兄弟の全員がこれに納得したわけではなく、マエズロスは争いを回避するために弟たちを連れてミスリムを去る。
彼らはモルゴスの本拠地アングバンドからの襲撃に対して無防備なヒムリングの丘周辺の土地に移って警戒を続け、以後その地はマエズロスの辺境国と呼ばれるようになった。こうしてマエズロスは進んで危険な場所の防衛を引き受ける一方で、その後背地である東ベレリアンドを事実上手中に収める。
彼はフィンゴルフィン家とフィナルフィン家の者達と友好を保ち、メレス・アデルサドの宴には弟マグロールと共に辺境の戦士団を引き連れて参加した。
ダゴール・アグラレブの合戦ではモルゴスの奇襲を見事に撃退し、フェアノールの息子たちの警戒が怠りないことを示す。
ベレリアンドに人間(エダイン)がやってくると、マラハの族のアムラハがマエズロスに仕えた。
だがダゴール・ブラゴッラハの合戦でアングバンドの包囲は破られる。辺境国は蹂躙されて弟たちは全員がその領土を追われた。マエズロスだけはヒムリングの丘の砦を死守し、残党を糾合してモルゴスの伸長を辛うじて阻んだ。
マエズロスはこの上ない剛勇をもって数々の
勲 をあげ、オーク共はかれを前にして逃げ出した。サンゴロドリムで受けた責め苦以来、かれの精神は、白い火のように体内で燃え、あたかも死者の国から還ってきた者のようであった。*2
連合提唱とその破綻†
やがてベレンとルーシエンのシルマリル探求の功業が彼らの許に伝わると、マエズロスはモルゴスが必ずしも難攻不落ではないことを知って希望を取り直す。そこでマエズロスの連合と呼ばれる提唱を行い、モルゴスに敵対するすべての勢力を糾合してアングバンド攻略の連合軍を形成しようとした。
だがフェアノールの誓言が引き起こした禍のため、ドリアスとナルゴスロンドからはほとんど援助を得ることができなかった。さらにマエズロスに臣従する東夷のウルファングの一族は、既にモルゴスに誘惑されてその間者となっていた。
とはいえひとまず全ベレリアンドの賛同を得たマエズロスは力試しを急ぎ、各地で一斉に蜂起してモルゴスの軍勢を北方から一掃。そして全軍の糾合が完了すると、フィンゴンは西から、マエズロスは東からアングバンドを挟撃してモルゴスの全軍を粉砕する計画を立てた。
連合軍はゴンドリンの思いがけない参戦で士気を大いに高めたものの、ウルファングの息子ウルドールの奸計でマエズロスは出撃を遅滞させられてフィンゴンと合流するタイミングを逸する。アングバンドの門前で分断された両軍は、モルゴスの解き放った主力部隊とウルファングの息子たちの裏切りによって逆に挟撃される形となり、決定的な大敗北を喫した。(ニルナエス・アルノエディアド)
フェアノールの息子たちはドワーフと共に血路を切り開いてドルメド山に撤退。
これ以後、マエズロスと兄弟たちはエレド・リンドンの山麓に逃れて緑のエルフと交わり、森で放浪の暮らしを行うようになる。
繰り返される同族殺害†
シルマリルの一つがトル・ガレンのベレンとルーシエンの手元にある間は、フェアノールの息子たちも手出しを控えていた。だが二人が死に、シルマリルが二人の息子であるドリアスの王ディオル・エルヒールの手に渡ったことが知られると、再びフェアノールの誓言が目覚める。
フェアノールの息子たちはシルマリルを引き渡すようディオルに書状を送り、これが無視されるとケレゴルムに扇動されてドリアスを襲撃し、二度目の同族殺害が犯された。この戦いでケレゴルム、クルフィン、カランシルが戦死し、また幼かったディオルの子エルレードとエルリーンはケレゴルムの召使の手で森に置き去りにされ行方不明になる。
マエズロスはこれを大いに悔やんだが、シルマリルがシリオンの港に逃れたディオルの娘エルウィングの手元にあることがわかると、再び誓言に突き動かされて三度目の同族殺害を起こす。シリオンの港は劫掠され、アムロドとアムラスも戦死し、エルウィングはシルマリルと共に大海に身を投じた。
最期†
やがてエアレンディルとエルウィングによってシルマリルの一つはアマンに到達し、それから天に上げられてエアレンディルの星となった。怒りの戦いでモルゴスは打ち倒され、その鉄の王冠に嵌っていた残り二つのシルマリルも、ヴァリノールの軍勢の手に取り戻される。
エオンウェはシルマリルに対する彼らの権利は度重なる同族殺害で失効したと述べ、ヴァリノールに戻ってヴァラールの裁きを受けるようマエズロスとマグロールに命じる。二人とも誓言に倦み疲れ、マグロールはエオンウェの命令に従うことを望んだものの、マエズロスはそれでも誓言の成就を試みることを主張する。
「しかし、どうやったらわれらの声が世界の圏外におられるイルーヴァタールの
御許 に届こう。われらは逆上して、イルーヴァタールの御名 にかけて誓ったのだ。そしてもし、誓いを守らなければ、永遠の闇がわれらにふりかかるよう求めたのだ。誰がわれらを解き放ってくれよう」*3
マエズロスとマグロールは夜半にヴァリノールの軍勢の陣営を襲って見張りを殺し、保管されていた二つのシルマリルを奪って逃げ去る。
だがエオンウェの言葉通り、シルマリルはもはや兄弟を正当な持ち主とは認めず、その身を焼いた。これを悟ったマエズロスは苦悶と絶望のあまりシルマリルの一つを抱いたまま大地の火の割れ目に身を投じて死んだ。
多数の名の意味†
以下の名前及びその説明は『The Peoples of Middle-earth』「The Shibboleth of Fëanor」による。
- Nelyafinwë(ネルヤフィンウェ)
- 父フェアノールが与えた父名。クウェンヤでFinwë third(フィンウェ三世)の意味。
- Maitimo(マイティモ)
- 母ネアダネルが与えた母名。クウェンヤでwell-shaped one(見目優れた者)の意味。その名の通り美しい体の持ち主だった。
- Russandol(ルッサンドル)
- 兄弟や親戚たちから付けられたエペッセ。クウェンヤでcopper-top(銅頭)の意味。祖父譲りの赤銅髪だったことにちなむ。
- マエズロス(Maedhros)
- MaitimoとRussandolを基にしたと思われるシンダリンでの名。
コメント†
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