フアン†
概要†
解説†
名は「猟犬(hound)」の意*1。強大な力を持ったヴァリノールの猟犬であり、何者もその視覚と嗅覚から逃れることはできず、いかなる魔術も彼を止めるには役に立たない。高い知能と高潔な心の持ち主でもあり、あらゆる生類の言葉を理解することができたが、彼自身は生涯で三度のみ口を利くことが許されていた。
元々はオロメの猟犬であったが、オロメの友であったケレゴルムに与えられる。ケレゴルムに付き従って至福の国から中つ国に渡ったことで、フアンもノルドールに課された滅びの運命に繋ぎ止められることになったが、同時に天が下にかつて存在したこともない強大な狼と戦うまでは死なないという運命を下された。
レイシアンの歌において、フアンは悪業にとり憑かれた主人のケレゴルムを見限り、ベレンとルーシエンを助けて働いた。
レイシアンにおけるフアン†
ベレンを追ってドリアスを出奔したルーシエンを見つけ、彼女をケレゴルムとクルフィンの許に連れてきたのはフアンであった。だがケレゴルムとクルフィンは邪心を起こしてルーシエンをナルゴスロンドに幽閉したため、同情したフアンは主人に反してルーシエンを助ける。この時フアンはルーシエンに助言を与えるために初めて口を利き、彼女を幽閉から救い出した。
フアンはルーシエンを背に乗せてトル=イン=ガウルホスに赴き、島に巣食っていたドラウグルインをはじめとする巨狼を次々と仕留める。そこでサウロンはフアンに課せられた運命を思い出し、自ら史上最大の狼に姿を変えることでフアンを倒そうとした。サウロンの力は強大であったが、ルーシエンの眠りの魔術とフアンの力のために、ついにサウロンはねじ伏せられて敗退した。こうしてルーシエンは島に囚われていたベレンを救出する。
その後フアンはケレゴルムの許に戻ったが、主従の愛は旧には復さなかった。
ケレゴルムとクルフィンがナルゴスロンドを追放された時、主人に付き従ったのはフアンただ一匹であった。だがその二人がブレシルの森で行き遭ったベレンを襲ってルーシエンを連れ去ろうとした時、フアンは完全に主人への奉公を止める。フアンはベレンを殺そうとしたケレゴルムを阻み、去り際にクルフィンが放った矢からルーシエンを守った。さらに森から薬草を探してきて、ベレンの負った矢傷をルーシエンが癒やすのを助けた。
ベレンが単身アングバンドに向かおうとすると、フアンは再びルーシエンを背に乗せて彼に追いつく。この時フアンは二度目となる言葉を発し、もはやベレンとルーシエンの運命は一つであり、二人で共に難題に向かうべきであるとベレンに助言。また自分とはドリアスで再会することになるだろうと予言し、二人と別れた。
やがてその言葉の通り、大鷲に運ばれてアングバンドから生還した二人とドリアスで再会する。ベレンはカルハロスに片手を食い千切られて死に瀕していたが、フアンはルーシエンと共に再びベレンを介抱し、彼を死の淵から救い出した。
そして、ベレンの片手ごとシルマリルを飲み込んだカルハロスがドリアスに侵入すると、シンゴルの結成した狼狩りの一行にフアンも加わる。エスガルドゥインの滝の傍らにおいて、ついにフアンとカルハロスの戦いが行われ、運命に定められていた通り、フアンはこの史上最強の狼と相討ちになって果てた。
最期にフアンは三度目となる口を利き、ベレンに別れを告げて死んだ。
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