ビルボの別れの宴†
概要†
カテゴリー | 歴史・事件 |
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スペル | Bilbo's farewell feast |
その他の呼び名 | 誕生祝い(Birthday Party) |
解説†
ホビット庄暦1401年(第三紀3001年)9月22日にビルボ・バギンズが自身の111歳の誕生祝いに催した盛大な祝宴。同じ誕生日である養子のフロド・バギンズの33歳の成人祝いも兼ねていた。
日が上り、雲はかき消え、たくさんの旗が
翩翻 とひるがえり、いよいよ楽しい日が始まったのです。
ビルボ・バギンズはこれを宴会と呼びましたが、実際は、さまざまな催しを集めて一つにしたものでした。 … 歌に踊りに音楽に、そしてさまざまな遊びが始まりました。食べ物や飲み物が供せられたことはいうまでもありません。正式の食事だけでも昼食にお茶に正餐 (これが夕食です)と、三回もありました。しかし、昼食といい、お茶といい、けじめがわかるのは、お客がそろって席につき、いっせいに食べているからで、間の時間には、随意にただ大勢の人たちが飲み食いしているというふうにして――だれもかれも、朝の十一時から、花火の始まる六時半まで絶え間なく食べていました。*1
祝宴は袋小路屋敷の南側にある原っぱにいくつもの天幕が張られて執り行われた。
近隣の住人は一人残らず招待され、ビルボの親族も(サックビル=バギンズ一家などの日頃は不仲だった者たちも含めて)大勢招待された。招待状を送られていなかったり遠方からわざわざ来たような便乗者もいたが、ビルボは原っぱの入り口に新設された門の前に立ち、全員に自分で贈り物を手渡した。特に子供たちのためには、はなれ山のドワーフに注文した特別な魔法の玩具が用意されていた。
宴会では大変な質と量のご馳走が振舞われ、特別な余興としてガンダルフが魔法の花火を打ち上げた。その花火の中にはビルボの前の冒険に敬意を表して龍を模したものもあり、あまりの迫力に驚いて這いつくばった参加者もいたほどだった。
だがビルボ本人は花火の後の晩餐の席上で、親族一同を前に別れの挨拶を述べ、(ガンダルフの魔法による)閃光とともに(一つの指輪を用いて)突如として文字通り姿を消してしまった。
後には袋小路屋敷と、フロドを後継者に指名して全財産を残す旨の正式な遺言状と、親族たちそれぞれへの(ものによっては皮肉たっぷりの)贈り物と(ギャムジーとっつぁんのような)貧しいホビットたちへの心からの贈り物、そして一つの指輪が残されていた。
144人の招待客†
「何よりも申しあぐべきことは、わたくしはここにおられる皆さんが一人残らず好きでたまらないということであります。かくもすぐれた、かくもりっぱなホビットたちに囲まれて暮らすには、百十一年もなお短すぎる次第です。」万雷の拍手喝采。
「ここにおられる半数の方々は、存じ上げたいと思うことの半分しか存じあげておりません。また、皆さんのうち半数以下の方々に対しては、その方々が受けてしかるべき好意の半数しか抱いておりません。」*2
一般の招待客とは別に、木の前の原に立てられた別席晩餐会場の大テントに招かれた特別な客達で、ビルボの親戚およびその子供たちと、親戚ではないが特に親しい友人たち(ガンダルフなど)からなる。その人数はビルボとフロドの年齢を合わせた数を記念して総勢で144名にのぼったらしい(つまり12ダースであり、ホビット流の言い方では「1グロース*3」とも言うが、これは人を数えるのに適当な言葉ではない)。
ビルボと近親のバギンズ家、トゥック家、ブランディバック家の他にも、ボフィン家から大勢の出席者がおり、ビルボの祖母の実家である掘家、ビルボの母方の祖母(トゥック翁の妻)の実家である丸面家、また袴帯家、穴熊家、身善家、角吹家などから選ばれた者たちが招かれていた。
以下は『追補編』に記載されているホビットの系図からわかる招待客の一覧である。英語版ではボルジャー家とボフィン家の系図が追加され、他の系図にも訂正が加えられた。これによって新たに判明した招待客の名前には*印を付け、邦訳がない名前は英語表記のまま残してある。
失踪後の贈り物†
祝宴の翌日、袋小路屋敷には失踪したビルボが親族や知人達に残していった贈り物が並べられ、宛名と共にビルボからのメッセージが書かれた名札が付けられていた。その内のいくつかは一癖も二癖もある親戚達への皮肉が込められていたが、大半のものは本当に役に立つ心からの贈り物であった。
- 一本のこうもり傘
- アデラード・トゥックへ、あなたの専有物にしてください、ビルボより
頻繁に他人の傘を持ち去ったことに対して。 - 大きな紙屑籠
- 長の年月にわたる文通を記念して、ドーラ・バギンズへ、愛をもってビルボより
半世紀以上に渡って「よき助言」なる手紙を送られ続けたことを受けて。 - 金ペンとインクびん
- 兎穴家のミロへ、お役にたちますように、B・Bより
手紙に返事を書いたためしがないことに向けて。 - 丸い凸面鏡
- アンジェリカ用に、ビルボ伯父さんより
容姿のうぬぼれが強かったため。 - 空っぽの本棚
- 袴帯家のヒューゴへ、収集した本をしまってください、寄贈者より
本を借りるばかりで返さなかったことに対して。 - 銀のスプーンの入ったいれもの
- ロベリア・サックビル=バギンズへ、贈り物として差し上げます
ビルボが前回冒険で不在だった折、ロベリアが袋小路屋敷の銀のスプーンを多数くすねたことに対して。ロベリアは皮肉の意味を直ちに察したが、それでもスプーンは受け取っていったという(さらに、値打ちのある小物をいくつも傘に隠してくすねようとしたところをフロドに見咎められている)。 - じゃがいも二袋、新しい鋤、毛織の短上衣、節々の痛みを和らげる軟膏一びん
- ギャムジーとっつぁんへの心からの贈り物。
- オールド・ヴィンヤード十二本
- いつも親切にもてなしてくれたロリマック・ブランディバックへの贈り物。
これはビルボが長年溜め込んだマゾムの整理という意味合いもあったようである。
だがこのせいで「袋小路屋敷では家財がただで配られている」というあらぬ噂が立つことになり、贈られてもいないのに物を持っていこうとする輩や、ビルボの財宝伝説を確かめようとする野次馬が殺到。フロドはその対処にいたく骨を折るはめになった。
コメント†
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