シルマリルの物語

概要

カテゴリー書籍・資料等
スペルThe Silmarillion
異訳シルマリッリオン

解説

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ホビットの冒険』『指輪物語』の前史となる本。

作中では、唯一なる神エルによる地球(アルダ)の創造、アルダの支配権を争うヴァラールメルコールの戦い、エルフ人間ドワーフの誕生、エルフの中つ国から至福の国への移動(大いなる旅)、シルマリルを巡るノルドール・エルフの中つ国帰還とベレリアンドでのモルゴスとの戦い(宝玉戦争)、ベレンルーシエンの物語(レイシアン)、トゥーリン・トゥランバールの闘い(ナルン・イ・ヒーン・フーリン)、エアレンディルの航海までの第一紀の物語、ヌーメノールの繁栄と没落(アカッラベース)、指輪戦争に至るまでの経緯(第二紀第三紀)、そして索引とエルフ語に関する資料が収録されている。エルフドワーフ人間のことはあるが、ホビットのことにはほとんど触れられていない。

指輪物語』序章にある、西境の赤表紙本の写本のうち)フィンデギルの筆写した写本の一番重要な点は、この本にだけ、ビルボが「エルフ語から翻訳したもの」のすべてがのせられていることである。その三巻は、一四〇三年から一四一八年の間に、ビルボが裂け谷であたれるだけの資料にあたり、聞ける限りのひとに聞いて書いた、博識達文の著作であった。とはこの本の事と考えられ、ビルボ・バギンズの編纂とフロド・バギンズの整理によって当世に伝えられたという形になっていると思われる(ただし後述にあるようにトールキンはこの本を完成させる前に死去したため、その構想はやや不完全な物となっている)。

目次

出版までの経緯

トールキンは、『ホビットの冒険』執筆以前から断片的に本作に含まれる内容の著述を続けており、『ホビットの冒険』においてもごくわずかだが本作の内容について触れる記述がある(エルフとドワーフの確執、エルロンドについての記述、グラムドリングオルクリストの由来についてなど)。
指輪物語』ではそれがより顕著になり、ベレントゥーリンエアレンディルなど多数の固有名詞が引用されることになったが、それらについての説明は『指輪物語』本編では記述されていない。
そのためトールキンは『シルマリルの物語』を『指輪物語』と同時に出版することを希望していたが、とても完成が間に合わないとして見送られ、その一部が追補編に収録されるのみとなった。

『指輪物語』の発売と大ヒットを受け、本書(に含まれる物語)を求める読者からの声が多数上がり、トールキンは『シルマリルの物語』の執筆を再開する。だがトールキンの遅筆、また完璧主義による改稿が重なったことなどにより完成は遅れ、トールキンは完成前の1973年に他界した。そこで本作引き継ぎの準備を受けていた息子のクリストファの編集を経て、1977年に出版された。

クリストファは、同一人物などについての複数の異なる設定案を取捨選択したり、書きかけのままで終わってしまった部分をやむなく放棄したりして、整理しひとつの物語に繋げる必要に迫られた。その結果この本に採用されなかったトールキンの原稿や草稿などは、『終わらざりし物語』や『The History of Middle-earth』などに収録されている。またこれらの本の記述をクリストファが纏めて再編集し、物語の一部分をピックアップして解説を加えた『The Children of Húrin』『ベレンとルーシエン』『The Fall of Gondolin』がある。

日本語版について

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『ホビットの冒険』『指輪物語』の翻訳を行った瀬田貞二が1979年に他界したため、指輪物語で瀬田を手伝った田中明子が翻訳を勤めた。
日本語版は、1981年から1982年にかけて上下巻にわけた版が出版された後、2003年に新版が出版された。旧版では上下別巻だったものが、新版では一冊に纏められた。また新版では原書のSecond Editionを底本にしており、冒頭にトールキンの手紙(『The Letters of J.R.R.Tolkien』Letter131)の文章が入っているほか、クリストファ・トールキンによる修正も入っている。またエルフ語の日本語表記も、より正しい発音に近いと思われる片仮名表記に改められた。

2020年12月に、英語版の最新版の内容を反映し、さらに固有名詞を中心に翻訳の大幅な変更が行われた、日本語版電子書籍の『指輪物語』『シルマリルの物語』が公開された(固有名詞の変更については電子書籍版/翻訳対比表を参照)。最初Apple Booksで公開、その後Kindleで公開されている。また書籍文庫版が上下巻分冊という形で、2023年11月に発売されることになった。

標題紙のテングワール

『シルマリルの物語』標題上部
『シルマリルの物語』標題下部

ð taləs v ð first ajə ƕen morgoþ dwelt in middlə earþ
nd ð elvəs madə wor upin him for ð rekoverī v silmarils
to ƕich arə appended ð downfall v numenor nd ð historī v
riŋs v powr nd ð þird ajə in ƕič ðesə taləs komə to ðeir end

The tales of the First Age when Morgoth dwelt in Middle-earth and the elves made war upon him for the recovery of the Silmarils, to which are appended the Downfall of Númenor and the history of the Rings of Power and the Third Age in which these tales come to their end

訳し方については、フェアノール文字の項を参照。

映像化について

何度か映画化など、映像化の企画は上がっているが、権利を持っていたクリストファ・トールキンと、彼の死後に権利を引き継いだTolkien Estateが許可していないため、実現していない。Tolkien Estate公式サイトには「多くのファンが『シルマリッリオン(シルマリルの物語)』の映画を見たいと願っていることは理解できるが、トールキン・エステートは現在、そのような映画の計画はない。(While understanding the wish of many fans to see a film of The Silmarillion, the Tolkien Estate has no current plans for any such motion picture.)*1」と表記されている。
ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』では一部に第一紀の描写があるが、あくまでこの作品は『指輪物語』の映像化権によって制作されており、作中の描写や固有名詞も『指輪物語 追補編』に記述があるものに留まっている。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • Amazon Primeでドラマ化、2021年配信予定 -- エルフ好き 2021-03-29 (月) 23:01:58
  • ソース忘れました
    https://collider.com/lord-of-the-rings-tv-show-amazon-synopsis/ -- エルフ好き 2021-03-29 (月) 23:02:16
    • やっぱり第二紀メインっぽいな。怒りの戦いとかは実写化されないか。モルゴスみたい気もするけど。 -- 2021-03-29 (月) 23:55:56
  • フェアノールの一族をそのまま描くと多分アウトレイジみたいなヤクザ映画になる -- 2021-06-28 (月) 10:12:02
  • 『出版までの経緯』の、クリストファーへの引き継ぎが「念のため」というのはどこ情報?
    トールキンにとって死がそれほど早く訪れるとは予想してなかっただろうとはいえ、高齢であることは間違いなかったわけで、当然自分の死期を見越してクリストファーに後を託した、というニュアンスに『或る伝記』からは読み取れましたが。トールキンは晩年には自分の死をかなり意識していたわけで、クリストファーへの引き継ぎは「念のため」などではなく緊密の課題であったでしょう。 -- 2021-12-16 (木) 22:06:01
    • 指摘部分を削除しました -- 該当部分記述者 2021-12-17 (金) 13:32:36
    • そもそもトールキンが死期を先だと思っていたって情報がここに必要かな、と思います -- 2021-12-17 (金) 18:18:06
  • 日本の有名男性声優、シルマリルのキャラにキャスティングしたら全員使いきる説 -- 2023-02-26 (日) 01:15:34
    • 昔のアニメみたいに一人複数役担当してもらいましょうwww -- 2023-10-27 (金) 15:27:09
  • 正直なところもっと小説的な形で読みたかったという思いがありますが、あえてその形式を離れてより伝説や伝承のような形式にしたにしたかったということなのでしょうか。 -- 2023-07-19 (水) 01:11:34
    • 小説形式と伝記形式を織り交ぜてメリハリをつけるというのが教授の構想でしたが、小説形式になるはずだった部分をどれも完成できず未完のまま教授は他界、クリストファーは後に残されたメモや覚え書きの山から全体を再構成しなければならず、結果的に大部分を伝記形式にせざるを得なかったというのが事情です。 -- 2023-10-27 (金) 18:21:21
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