オーディオブック『ホビットの冒険』

ブログではご無沙汰です。何だかんだあって『決戦のゆくえ』の劇場公開すらブログではスルーしてしまいましたが……(一応Wikiのトップページの情報はちょくちょく更新しています)。

さて本題ですが、オーディオブック配信サービスFeBeより、「ブログで感想を書いて紹介してほしい」と、オーディオブック版『ホビットの冒険』のサンプルを頂きましたので、それについて触れたいと思います。

まず基本情報から。これはオーディオブックであり、ドラマCDではありません。あくまで朗読で、効果音やBGMなどは入っておりません(要するにBBCラジオドラマ版『The Lord of the Rings』みたいなものは想像しないでください)。朗読されているのは、瀬田貞二氏の訳による岩波書店版(原著の第2版底本)で、訳者後書きと、作家・編集者である斎藤惇夫氏による“「途中でやめることのできない」冒険”という解説も入っています。ナレーターは永吉ユカ氏。

私は、オーディオブックというものを聞くのはこれが初めてです。さらに白状すると、この『ホビットの冒険』もまだ全部聞く事ができておりません(約18時間あるので……)。ただ朗読は全体的にややゆっくりとした速度で、はっきり発声し、聞き取りやすくするよう心がけられているように思われます。各キャラクターの台詞には感情も込められていますが、それらも感情を強く表すより、聞き取りやすさの方を重視しているように感じられました。

そのせいもあって、永吉氏はキャラの演じ分けも行われようとしておりますが、なにせドワーフの数が(原作からの問題なのですが)、個性があまりないくせに多すぎます。またナレーターが女性なので、ガンダルフやトーリンなどはどうしてもその言葉遣いからも、老婆のように聞こえてしまいます。『ホビットの冒険』原作は登場するのはどうせ男キャラしかいないので、男性がナレーターをやったほうが良かったのではないかとも思えました。あと、朗読自体には台詞以外でも抑揚がつけられておりますが、原作の時から数多くある劇中歌もそのまま朗読になってしまっているのは少々残念です。英語で韻を踏んでいたのを日本語に訳したもののため難しいという事はわかっているのですが、リズムくらいはつけて欲しかったなあと……。

ともあれそのような感じなので、朗読自体は非常に丁寧ですが、“オーディオブックならではの楽しみ”というのはあまりないというか、「(原作本に添付してある)地図を見てください」というト書きまで馬鹿正直にそのまま朗読してしまっているのは少々滑稽な感じもしてしまいましたが、オーディオブックというのはそういうものなのでしょうか?

ただ、音声であるが故の利点ももちろんあります。当たり前と言ってしまえば当たり前ですが、文章を目で追う必要がないということ。したがって混雑する電車の中で聞いたり、何か作業をしながら聞いたりするにはいいでしょう。あるいは、子供に朗読してやるかわりに聞かせるのも、ものぐさな親にとってはありがたいかもしれません。というわけで根っからのトールキンファンや、子供をそういう人間にしたい親にとっては良いでしょう。また、もちろん視覚障害者にとっては、非常にありがたいものでしょう。そういう意味ではオーディオブックはもっと普及してほしいものですが(英語圏だと沢山あるんですけど)。

またありがたい事に(あるいは当然そうであるべきように)、朗読はMP3形式でダウンロードする事が可能なので、好きなプレイヤーに放り込んで色々な環境で聞く事ができます。また私が貰ったサンプルの中にはなかったのですが、一度購入すれば通常版の他に、2倍の速度で再生している倍速版もダウンロードする事ができ、好みで選ぶ事ができるようです。そのため“木の鬚派”ではなく“せっかち派”の人は、倍速版で聞くといいのでしょう。

私は、BBCラジオドラマ版『The Lord of the Rings』の素晴らしさが脳裏にこびりついているため少々辛口な評価になってしまいましたが、とりあえず商品ページでは視聴も可能になっているので、興味があったら聞いてみると良いでしょう。

そんなわけで、オーディオブック『ホビットの冒険』の話でした。